うそつきの日々
第2章 うそつきの日々
たかしの家族は、たかしが小学校3年生の時に新しく家を建て、
引越しをした。
郊外のベットタウンで新しい家が次々に建てられた時代である。
たかしも引っ越しに伴い転校することになった。
たかしは、新しい学校にすぐに馴染むことができた。
自分の過去を知らない学校でたかしは、前の学校でのことを
あることないこと新しいクラスメートに話をした。
市内の学校の出来事は、郊外の学校の子ども達にとっては、
まぶしい出来事なので、たかしは、クラスの中心人物になることができた。
けれども、ある日友達と殴り合いのケンカをしたことで様子が一変する。
たかしは、友達に殴られた瞬間、大泣きしてしまったのである。
周囲の子ども達は、その泣きっぷりを見て、次の日からたかしのことを
「泣き虫」として軽蔑し始めた。
新しい学校でクラスの中心になっていたたかしは、愕然とした。
けれどもたかしの「泣き虫」っぷりは収まらなかった。
毎日のように友達に泣かされ続けた。
今と違い、小学校の一クラスが45人くらいいた時代。
担任の先生もいちいち子ども達のケンカに口を出してくる時代ではなかった。
毎日のように泣かされているうちにたかしの小学校生活は終わった。
中学校には、近くの3つの小学校から子ども達が入学してくる。
たかしは、このチャンスを逃さなかった。
「俺が泣き虫だってことを知らない人がたくさん集まる。
もう一度、クラスの中心になれるかもしれない。」
たかしの挑戦が始まった。
たかしは、野球部に入部した。父の影響で少しだけ野球には自信があった。
他の学校から入部した子どももたくさんいたので、たかしは、いつものように
あることないこと言いながら自分を美化した。