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とりあえず落ちる

この落ち方は久しぶりな気が。





 ―現在午前8時(だと思われる)―




「ふわぁ……」


 俺は大きく欠伸をする。結局、昨日もあまり寝れなかった。主に流花のせいで。


「ったく……」


 勝手に鍵開けて入り込みやがって……毎回やられる身にもなれっつーの! あ、そうだ。今度同じことしてやろうかな。


「いや、やめておこう」


 そうしたら間違いなく槍が飛んでくるからな。その前に女の子の部屋に勝手に入り込む訳にはいかないし。


 と、さっきからこんな調子で朝から妖怪の山を下っている俺がいる。なんで山を下っているのかというと、博麗神社に行くためだ。


「なんでこんな朝から博麗神社まで行かなきゃならないんだよ」


 それは昨日行かなかった俺が悪い。と自分自身に突っ込んでみる。


「はぁ……めんどくさい」


 どこに行くにしてもいちいち歩かなきゃいけないんだもんな……文や椛にみたいに空を飛べたらどれだけ楽だろうか。


「なら飛べば良いじゃない」

「それは無理ですよ紫さん」

「何故?」

「何故って、俺には飛べる力がないからですよ」


 多分だけどね。


「そう。だったら飛べるようにしてあげましょうか?」

「結構ですよ紫さ……紫さん!?」


 俺は隣に顔を向ける。そこにはスキマの上に座っている紫さんがいた。


「はあい。久しぶりね代」

「い、いつからそこに!」

「さあ? いつからかしらね」


 なんだろ。紫さんはそう言って笑った瞬間、何故か背筋がゾクッとした。


「な、何か俺に用ですか?」

「ええ。まあ、そんなところかしら」


 朝から会っちゃいけない人に会っちゃった気がしてきた……というか、なんで俺がここにいるって知ってたんだ?


「代、あなたはエンリーって子知ってるかしら?」

「エンリー? ……ああ、流花ですか。知ってるも何も彼奴は家族ですよ」

「あら、そうなの」


 紫さんは小さく頷く。エンリーって久しぶりに聞いたな。あ、実は『天風流花』は今の名前で、昔は『エンリー・コーネット』っていう名前だった。


「それで流花がどうかしたんですか?」

「紅魔館から貴男とその流花って子宛てにパーティーの招待状を預かってるのよ」

「紅魔館から……ですか?」

「ええ」


 紅魔館から招待状だとっ……これは喜ぶべきことなのか、はたまた喜ばざるべきことなのかっ……。とりあえず、喜ぶべきことで!


「でも、貴男はいいとして、その流花って子に招待状を届けようにも居場所が分からなくて届けられないのよ」


 紫さんは困った顔をする。そっか。居場所が分からないんじゃ、届けようにも届けられないもんね。


「それなら俺が届けましょうか?」

「あらいいの? でも貴男、これからどうか行く所があるんじゃないかしら? 例えば、博麗神社とか」

「な、何故それを!?」

「さあ? 何故かしら」


 紫さんはそう言ってまた笑った。なんでこの人は俺の行き先を知ってるんだ。もしかして……いや、それはないか。あってたまるか。


「とりあえず先にこれを渡すわね」


 紫さんは袖の裾から招待状を取り出して、それを俺に渡した。招待状にはきっちりと俺宛てと言うことが書かれてる。


「わざわざありがとうございます。でも、なんで俺と流花なんかがパーティーに誘われたんですか?」

「そんなこと私にも聞かれてもねえ……あそこの館の主の気まぐれかなんかじゃないの?」

「気まぐれですか……」


 それならあり得るなくもないか……あそこの主、どっかの藍染程ではないけどマイペースだしな。


「ま、そういうことだから、行ってあげなさいな」

「そうします。あ、流花宛ての招待状もついでに預かっていいですか? 神社から帰ったら彼奴に渡すんで」

「そう。なら、お願いするわ」


 俺は紫さんから流花宛ての招待状を受け取る。何故か俺の招待状よりも流花の招待状の方が紙質がいい気がした。


「渡すまで燃やしたりしないでね」

「そんなことしませんよ」

「あら、それは分からないわよ?」

「はい?」

「例えば、弾幕勝負中の所に行ったりしたら、弾幕が当たって燃えるかもしれないわよ?」

「いやいやそんな所にわざわざ行ったりしませんよ」


 むしろ行ってたまるか。そんな所に行ったら巻き沿いくらうのが落ちだっつーの! 巻き沿いなんてもうゴメンだね!


「あらそう。それはつまらないわね」

「つまらないってオイ」

「それじゃあ私が面白くないわ」

「面白くないってなんや……ねん?」


 紫さんが袖の裾から扇子を取り出して開いた瞬間、地面を踏んでいる感覚がなくなった。足下を見てみると俺の立っている所にスキマが開いてた。


「だから私が送ってあげるわ。ついでだから飛ぶ練習もするといいわよ」

「ふっっっざけんなぁぁあ! クソババァァア!」


 俺はそう叫びながらそのままスキマへと落っこちていった。




◆◆◆◆◆




「あらあら、元気よく落ちていったわねぇ」


 紫は代が落ちていったスキマを見ながら笑う。


「でも、最後のアレはいらないわね」


 そう言いながら紫は代が落ちていったスキマの上にもう1つスキマを開けて、何かを下のスキマへと落とした。


「さてと」


 紫は広げていた扇子を閉じる。と同時に上下のスキマも閉じる。


「準備は整ったわね」


 後はあの流花って子が幻想郷を"壊さない"かどうかを見るだけね。


「パチュリーには少々無理をさせるかも知れないわねぇ……」


 紫はそう言いながらスキマへと入っていった。




◆◆◆◆◆




「うぉぉお!」


 只今スキマの中を絶賛落下中! 無数の眼がこっちを睨んでるけど気にしない! というか気にできない!


「! 光!」


 あれは出口か! 出口に出る前になんとかして飛ばなきゃ!


「飛べぇぇえ!」


 俺は飛ぼうと手足をジタバタさせる。そんなことしても、飛ぶことなんて出来るわけがないと分かっていながらも、ひたすら手足をジタバタさせる。


「飛べねぇぇえ!」


 当たり前だ。そのままの俺はスキマの出口に突入する。そして、俺はスキマを抜けた。


「なっ……!」


 スキマを抜けた瞬間、目に入り込んできたのは悠遠に広がる青空だった。青空とはこんなにも美しい物だったのか……


「って!」


 感動してる場合じゃねえ! このままだと地面に激突する! この高さじゃ流石の俺でも無事じゃ済まない!


「だ、誰かぁぁあ!」


 この飛べない獣の成り上がりを助けてくれぇぇえ! と、そう心の中で叫んだ時だった。


『くらいやがれ霊夢! 儀符「オーレリーズサン」!』

『甘いわよ魔理沙!』

「! あれは霊夢と魔理沙!」


 下の方で弾幕勝負中の霊夢と魔理沙がいた。見た感じ霊夢の方が優勢……あれ?


「弾幕勝負中!?」


 あのクソババァ、マジで送りやがったやな! アイツ絶対に許さねえ! いつか必ず仕返ししてやる!


「って、んなことよりも今のこの状況なんとかしねぇと!」


 このまま落ちたら本当に地面に激突する! それより確実に弾幕の餌食になる! なんとかし……


「これで終わりよ魔理沙!」

「はん! それはこっちのセリフだぜ霊夢!」

「……うっそーん」


 いつの間にか左に霊夢、右に魔理沙がいた。しかも、俺が目の前にいることはどうやら気づいてない。


「くらいやがれ! 恋符『マスタースパーク』!」

「そんなの返り討ちよ! 神霊『夢想封印』!」


 ……左から夢想封印。右からマスタースパーク。つまり、どういうことかみんななら分かるよな?


「ぎゃぁぁあ!」

「「! し、代!?」」


 コイツら今更かよ……夢想封印とマスタースパークを両側から受けた俺はそのまま落下する。


『ピュー……ドスン!』

「がうっ!」

「おう!?」


 俺は顔面から地面に激突する。


「いだだだ……」


 頭を押さえながら上半身を起こす。クソッ……あのババァマジで許さねえ……


「お、おい……大丈夫か?」

「これが大丈夫に見えるかよ!」


 目の前にいた赤いボブカットの女は俺にそう言ってきた。こんなにボロボロなのにどこが大丈夫なんだよ!


「それの様子じゃ大丈夫だな代」

「だから! これのどこ……が……」


 俺は目の前にいる赤いボブカットの女の顔を見て言葉を失った。と、同時に目から涙が出てきた。


『ピュー』

「お、お前は……」


 赤髪のボブカットに真紅の瞳……


「よお、代。500年ちょい振りだな」


 アイツだ……


『ピューー』

「あ、あ……」

「おう。どうした? お前に涙なんて合わねえぞ」


 目の前にいる赤いボブカットの女はそう言って笑う。間違いない。あの笑顔は間違いなくアイツだ……アイツだ!


『ピューーー』

「あ」

『ドシン!』

「がっ!」

「うおっ!?」


 目の前にいるボブカットの女に抱きつこうと起き上がった瞬間、真上から何故か墓石が降ってきた。その墓石は見事なまでに俺の頭に直撃。そのまま俺の顔面は再び地面に激突する。


「お、おーい? 代ー?」

「あ、朱……また会えたな……ガクッ」

「し、代!?」


 ああ、また会えるなんて夢にも思ってなかった……後、墓石。てめぇはもう少し空気を読みやがれ……ガクッ。






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