こうして異変は解決らしい
異変編(仮)完結?です。
「……なんでお前がいんだよ」
茶の間の襖を開いて中を見たとき、最初に出た言葉がそれだった。どうしてそんな言葉が最初に出たかと言うと……
「あやややや。代さんじゃないですか」
……そう。パパラッチこと射命丸文が縁側にいる博麗と話していたからだ。なんでいるんだし。
「あややややじゃねぇよ。なんでお前がここにいんだよ」
「新聞の配達に来たんですよ。それで霊夢さんがいた」
「あっそう」
別にどうでもよかったので、文がしゃべり終わる前に無理やり話を終わらせた。
「そんな言い方」
「博麗、隣に座っていいか?」
「別に座れば?」
「無視しな」
「ありがとさんっと」
俺は文を無視して博麗の隣に座る。
「ちょっ」
「あれ? 流花と花神楽は?」
「あの2人なら庭を散歩してくるとか言って外に出て行ったわよ」
「なんじゃそりゃ……」
永琳さんに茶の間で待っててと言われたのに散歩しに行くとかわけ分からん。
「アンタは来るの遅かったわね」
「ちと顔洗いに行ってた」
流花たちと茶の間に行く前に、顔に少し土がついていたことに気がついた俺は顔を洗いに洗面所に行っていた。おかげで気分もすっきりだ。……目の前に突っ立ってる天狗さえいなきゃな。
「ぐぬぬぬ……まだ無視する気ですか……しかしあきらめませんよ! たとえ無視されようとも新聞記者たる者」
「あ、博麗。お茶くれ」
「自分で淹れなさい」
「へいへい」
「……いい加減しないと泣きますよ?」
居間の卓袱台にある急須を取りに行こうとしたとき、文が泣きべそをかきながらそう言ってきた。うん。ごめん。やりすぎました。俺は急須を取りに行くことを止めて再び博麗の横に座る。
「分かったから泣くな。で、改めて聞くけどなんでここにいるだ?」
「新聞の配達をしに来たんですよ」
「新聞?」
文は手に持っていたペンと手帳を胸ポケットにしまい、ショルダーバッグの中から新聞を取り出して俺に手渡す。新聞には「文々。新聞」と書かれている。名前からして文が編集している新聞なのだろう。
「へー。お前の新聞初めて見るけど、よくできてるな」
「あたりまえですよ」
新聞を受け取り軽く中を見る。思っていた以上に出来がよかったので思わず感心した。……紫さんの面食らったような表情の見出しがあったけど見なかったことにしよう。
「それで、博麗と何してんだ?」
新聞をたたみ文に返す。文は新聞をショルダーバッグの中へと入れ戻した。
「取材していたんですよ」
「取材? なんの?」
「昨日の異変についてです」
「そうなんか?」
「そうよ」
博麗は茶をすすりながら答えた。異変の取材ねぇ……まぁ、昨日のあれなら新聞の一面を飾られるだろうしな。
「……って、取材しなくても記事書けるだろ!」
「え? なぜですか?」
「なぜって、異変が起きたときにお前もいただろ!」
「……そうでしたっけ?」
「そうだよ! お前、流花と一緒に追いかけてきただろ!」
文は腕を組んでうーんと唸りながら、何かを思いだそうとする。そして数秒後に手の平を叩き
「そうでした!」
「チェストォォオ!」
「いたぁ!?」
俺は素早く立ち上がって文の頭に手刀を振り下ろす。手刀をくらった文は頭を押さえながらよろめく。
「い、いきなり何するんですか!」
「何するんですかじゃねぇよ! お前らのせいで色々大変だったんぞ! バカ犬には襲われるし! 流花には追いかけ回されたあげく気絶までさせられるし! 散々なめにあったんだぞ!」
「そ、そんなこと私に言われても……」
「うるせぇええ!」
「あんたがうるさい!」
「がふっ!?」
博麗が怒鳴ったと同時にやや斜め上から陰陽玉が降ってきて後頭部を直撃する。その勢いで俺はその場に倒れた。そして頭を押さえて悶える。
「ぐおぉ……頭が……」
「うるさいからそうなんのよ」
博麗はそう言って茶をすする。うるさいからってここまでやらんでいいだろ。というか、どっから陰陽玉を出した。もしかしてスキマか? スキマからか?
「ところで文」
「なんでしょうか?」
「さっき気になることはないかって言ってたけど、あるにはあるわよ」
「本当ですか!」
文はポケットからペンと手帳を取り出して博麗に迫る。ちょっと顔近くありませんか?
「それはなんですか!」
「あんなに吹雪が吹き荒れていたのに一切雪が積もってないのよ」
「そういえばそうですね……私もここまで来るときに雪が積もってる場所なんて見ませんでしたね」
「一体、なぜかしら?」
「……なんでこっち見んだよ」
博麗は俺の方をジト目で見てくる。なんで俺を見るんですか?
「アンタなんか知ってるじゃないの?」
「知らねぇよ。花神楽にでも聞け」
「花神楽って誰ですか?」
「俺の愛刀だよ。文も何回か見たことあんだろ」
「あぁ。あの刀ですか。って、刀に聞いてどうするんですか!」
文は漫才のようなツッコミをする。ナイスツッコミだ文。だが甘いな。
「そやね。普通なら刀に聞いてもなんの意味もないよね。でもさ、その刀がしゃべれたらどうするよ?」
「……え? もしかして、しゃべったりするんですか?」
「さあ? どうか」
「おいす! ただいま!」
流花が茶の間の襖を思いきり開けて中へと入ってきた。それに続くように花神楽も中へ入る。なんというタイミングのよさ。まさしく噂をすればなんとやら。
「あれ? 文じゃん。何してんの?」
流花は文に気づくとこっちに来る。花神楽はその場から動かずに誰だよこいつみたいな目で文をじっと見る。
「あややや。流花さんですか。昨日の異変についてご2人に取材してるんです」
「昨日の異変って……ああ。吹雪のことね」
「はい。ところで、さっきから私を見てるあの子は誰ですか?」
文は花神楽を指差す。流花は文が指差した方へと顔を向けた。
「あの子は花神楽だよ」
「花神楽……? それってまさか……」
文は俺の顔を見る。俺は何も言わずにただ首を縦にふった。すると文は一瞬固まって……
「なんだってー!!!」
と、叫び声をあげて驚いた。やっぱり驚きますよね。俺も見たとき驚いたしな。違う意味でもな。
「な、なんで!? どうしてですか!? どうして花神楽が人に!?」
「俺にも分からないんだよ。どうして花神楽がこうなったのか」
昨日の一件以来俺なりに花神楽がどうして擬人化したのかと色々と考えてみたりしたがさっぱりと分からなかった。妖刀ではあるが擬人化できるほどの妖力はないし、付喪神でもない。なら、一体なぜ擬人化したのだろうか。見当がつかない。
「代さんも分からないんですか……」
「本人に聞けばいいじゃないの?」
「あ、そうですね。花神楽さ」
「私にも分からない」
花神楽は文が言い切る前に答える。花神楽自身も分からないのか……なんていうミステリー。
「そうですか……流花さんは何か分かりますか?」
「うーん……ごめん。私も分からないや……」
「流花さんもですか……霊夢さんは?」
「分かるわけないでしょ」
「ですよね……はぁ……」
文は肩を落としてため息をつく。そんなに花神楽が擬人化した原因を知りたかったのだろうか。
「……まぁ、分からないのなら仕方ないですよね。それで、花神楽さんに聞きたいことがあるんですが」
「なんだ?」
「あれだけの吹雪を起こしたのに、なぜ雪が積もら」
「知らない」
花神楽はまた文が言い切る前に答える。なんか、どこぞの藍染みたいだな。
「本当に知」
「知らないものは知らない」
「……そうですか……」
文は肩をがっくりと落として深くため息をつく。なんというか……ドンマイ。
「どうしたの文?」
「いえ……なんでもないです。そろそろ天狗の棟に戻りますね」
そう言って文はペンと手帳をポケットに仕舞い翼を広げる。
「あ、そうだ」
と、文はすぐには飛び上がらずにショルダーバッグの中を探り、1通の手紙を俺に手渡してきた。
「なんだよこれ?」
「天魔様から代さんに渡すように言われていた手紙です」
「天魔から?」
「はい」
アイツから手紙をよこしてくるなんて珍しいな。……まぁ、どうせ昨日の件についての手紙だろうが。
「ではこれで」
「あぁ。じゃあな」
「また後でね」
文は翼を羽ばたかせて空へと飛び去っていった。何度も言ってるけど空を飛べるなんていいよな。
「お待たせしました」
「あ、永琳さん」
文と入れ違うように永琳さんが茶の間に入ってきた。永琳さんは花神楽の横を通り過ぎて流花の方に近寄る。
「永琳さん遅かったですね」
「すみません。ちょっとばかしアクシデントがありましてね」
「アクシデント?」
「はい。でも、些細なアクシデントでしたから気にしないでください。それより、流花さん、具合はどうですか?」
「見ての通りです!」
流花はなぜかどや顔しながら胸をはってそういった。どや顔する必要も胸をはる必要ないだろ。
「そうですか。それなら大丈夫ですね」
永琳さんは流花の様子を見て微笑む。相変わらずの笑顔で。見ていて思わずうっとりしてしまう。
「それじゃ、そろそろ私帰るわね」
「え?」
博麗は湯飲みを横に置き、背伸びをして立ち上がる。いきなり何を言い出すんですか博麗さん。
「あら、帰っちゃうの? もう少しゆっくりしていけばいいじゃない」
「それもいいけど、やっぱり家でゆっくりするのが一番なのよね。それに家事もやらなきゃならないし」
「そう。それなら仕方ないわね。見送りはいるかしら?」
「1人で帰れるわよ」
博麗は俺と流花にじゃあねと言って部屋を出て行った。今日のアイツ、本当にコロコロ変わるよな。
「私たちもそろそろ帰ろうか?」
流花は俺の方を向いてそう言ってきた。お前まで何言ってんだよ。
「俺はまだ帰らん」
「なんで?」
「もうちょいゆっくりしてい」
「理由なんて聞いてない」
「だったら聞くな!」
そっちから聞いておいて理由なんて聞いてないとかないだろ! だったら始めっから聞くなよ!
「ま、そーゆうことだから帰るよ代」
「意味分からん! 俺は帰ら」
「ごちゃごちゃうるせぇよ」
「……よし。帰ろう」
俺は立ち上がる。今の流花に逆らったらまたグングニルが降ってくるよう予感がした。
「じゃあ、永琳さんまた!」
「ケガの手当てとかありがとうございました」
「あら、あなた達も帰っちゃうんですか。では、鈴仙に見送りさせますね」
「あ、私たちも大丈夫です! ちゃんと帰れますから」
「どうやってだよ」
博麗は多分飛んで帰ったから大丈夫だろうが、俺と流花は飛べない。花神楽はもはや問題外。おまけにここの竹林の道も知らない。それなのに見送りなしでどうやって帰るんだよ。
「どうやって、そりゃあ飛んでだよ」
「お前飛べないだろ。翼あるくせに」
「む。飛べるよ。ほら!」
流花は片翼を広げる。そんなちっさい片翼で、どう空を飛ぶんだ。と、思ったそのときだった。
「なん……だと?」
小さかった片翼がみるみる大きくなり、やがて翼のない方にもダイヤモンドダストのような翼が生える。純白の大翼にダイヤモンドダストのような形のない翼。その美しさ、その綺麗さは言葉では表現できない。
「ほら、行くよ2人とも」
「あ、あぁ……」
流花は手を差し伸べる。その姿はまるで天使のようだ……ん? 天使?
「……おい流花。お前、まさか天使の力使ったりしてないよな?」
「そ、そんなの使ってないよ」
流花は俺から顔を逸らす。図星だな。
「お前なぁ……あれほど使うな契に言われてただろ」
「べ、別にいいじゃん! ここは幻想郷だよ? 使っても問題ないでしょ!」
「そうだけどな……」
「ならいいじゃん! ほら! 帰ろ!」
「おわっ!?」
流花は強引に俺とこっちに歩いてきた花神楽の手を掴み飛び始める。
「じゃあ、永琳さんさようなら!」
「流花! ちょっと待」
そのまま流花は空高く飛んだ。永遠亭がみるみる小さくなって、そして見えなくなった。まだ永琳さんにさよなら言ってなかったのに……
「あんまりだー!」
俺の叫び声は青空の彼方へと消え去っていった。
はろはろ。風心剣です。
例によってやっぱりろくな目に合わなかった代さん。まあ、今回はまだいい方でしょうか。
さて、訳が分からなくなってきた流花さんはどうなる?天使だったり天狗だったりと……ましてや元人間。
まあ、その話はまた今度したいと思います。
それではまた。




