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次から次に

最近、寒くなってきましたね。いよいよ冬の到来でしょうか。





「いててて……」


 頭を押さえながら俺は起き上がる。まったく、アイツらは手加減って言葉を知らないのかよ。


「くそっ……あんのロリ兎!」


 さっきは可愛いから許すとか言ってたけど、やっぱり前言撤回。許さん! 次会ったら成敗してやる! ……いや、成敗すんのはやめるか。かるく頭を撫で……叩くだけでいいや。


「とりあえず、中に戻らんと」


 永琳さんを待たせるわけにはいかないしな。俺は立ち上がり廊下に向かって歩き出そうとする。と、そのとき後ろから聞き慣れた声が聞こえた。


「あら、代じゃない」


 俺が足を止めて振り向くと、輝夜さんがこちらに向かって歩いてきていた。寝間着をらしき物を着てる辺り、今さっき起きたのだろうか。


「あぁ、輝夜さんですか。おはようございます」

「おはよう。履き物もはかずにこんな所で何してるの?」

「えっと……それはですね……」


 俺はさっきあった出来事を輝夜さんに軽く説明する。全部聞き終えた輝夜さんは苦笑していた。


「それは大変だったわね」

「本当ですよ……」


 流花達、スペカを幾つもぶっ放してきたもんな。まったく、オーバーキルもいいところだよ。


「ところで輝夜さんは何を?」

「朝の散歩よ」

「散歩……ですか?」

「えぇ。日課なのよ」


 ふむ。朝の散歩が日課ねぇ……中々いいじゃないか。俺も今度から散歩は朝にしようかな。


「そういえば代。こんな所で立ち話いいのかしら?」

「何がですが?」

「永琳に呼ばれたんじゃないの?」

「……あ! そうだった!」


 やべっ! 忘れてた! 早く診察室に行かなきゃ!


「輝夜さ」

「診察室ならここから玄関まで走った方が早いわよ」

「ありがとうございます!」


 輝夜さんに一礼をして俺は走り出す。これ以上、永琳さんを待たせるわけにはいかん! ここは全力疾走だ!




◆◆◆◆◆




「つ、着いた……」


 走り始めてから約6分。玄関前に到着しましたよっと。……朝から全力疾走はマジきつい。後、裸足で走ってたから足の裏が痛い。


「とりあえず深呼吸をしよう」


 大きく吸ってー吐いてー。もう1回大きく吸ってー吐いてー。……よし。大分落ち着いた。


「よしっ」


 玄関の引き戸を開ける。中へと入ろうとしたが、足が汚れているの思い出してその場に止まる。周りを見るが足を拭けるような物は見当たらない。これじゃ部屋の中に入れん。


「誰かいませんかー?」

「はいはいー。呼んだー?」

「……お前かっ!」


 誰かいないかと叫んでみる。すると、廊下の角からてゐが歩いてきた。俺はそれを見て、漫才師がよくやる動作と共に突っ込みを入れる。随分とタイミングがいいなオイ。


「そのいいぐさなよ。せっかく来てあげたのに」

「分かったから何か拭く物を持って来てくれない? 足が汚れているから中に入れないんだよ」

「仕方ないわね〜。ちょっと待ってなさいよ」


 てゐはそう言って廊下を走って行く。そして数十秒後に再び走って戻って来た。左手には濡れたタオルが握られている。てゐはそれを俺に手渡す。


「ほら。持ってきたあげたわよ」

「おう」


 てゐから手渡しされたタオルで自分の足を拭く。手渡ししてきた瞬間、また何か企んるんじゃないかと思ったが、そんなことはなかった。


「ありがとうな」

「気にしなくていいわよ」


 自分の足を拭き終わると、俺は玄関に上がりてゐにタオルを返す。てゐはそれを受け取り裏返して畳む。


「さて……診察室はどっちだ?」


 右と左に部屋の扉がある。おそらく、片方が診察室で片方が違う部屋なのだろう。どっちだ……どっちが


「診察室なら左だよ」

「……どーも」


 てゐはそう言いながら廊下を走っていった。空気読めよ。今は俺の番だろ。……何が俺の番なんでしょうね。まぁ、いいや。とりあえず、部屋に入るか。


「失礼しまーす」


 左の部屋の引き戸を開いて中に入る。軽く中を見渡すと、そこは診察室のような造りの部屋だった。……あたりまえか。診察室だもんね。と、椅子に座っていた永琳さんが俺が入ってきたことに気づき、こちらに向いて話かけてくる。


「あら、遅かったですね」

「すみません……ちょっとしたいざこざがありまして……」

「いざこざですか?」

「えぇ……」


 いざこざ……というのか? あれは。


「それで、何か俺に用ですか?」

「あぁ、そうでした。こちらへどうぞ」


 永琳さんは近くにある椅子に座るように勧めてきた。俺は勧められるままにその椅子に座る。


「腕を見せてもらっていいですか?」

「分かりました」


 袖を捲り上げて永琳さんに見えるように腕をあげる。すると、永琳さんは腕にまいてあった包帯を取る。そして、軽く様子見をした。


「……うん。ケガの方は大丈夫ですね」

「おお。そうですか」


 あれだけのケガをたった1日で治すなんて、永琳さんは凄いな。美貌だけじゃなくて、医者としての腕前も一流なんだな。


「後は額にある傷だけですね」

「額?」


 額に傷なんてあったっけ? いや、確かないはずだ。ケガしてたのは後頭部だったし。じゃあなんで……あぁ、そういうことか。


「これ傷じゃないですよ」

「え? 違うんですか?」

「はい。これは式神の契約印です」

「契約印……ですか?」

「そうです」


 妖怪や神は式神の契約を交わすとき、身体のどこかしらに印が刻まれる。

 印の形状は決まっておらず、様々な物がある。文字のような形や数字のような形、暗号のような形をした物まである。

 どうやって形状が決まるのかは知らないが、俺の場合は引っ掻き傷のような形をした印が額に刻まれた。


「なるほど……」


 永琳さんはそう言って頷く。


「ちなみに誰と契約を?」

「あー……それは……」

「言えないの?」

「まぁ……」

「そうですか。なら、無理やり聞くしかないですね」

「え!? ちょ、ちょお!」


 永琳さんは机の引き出しから注射器取り出して針をこっちに向ける。


「分かった! 分かりましたから! その注射器を」

「冗談ですよ」


 笑いながら永琳さんは注射器を机の引き出しに戻した。笑ってるけど、さっきの顔は本気でやりそうな顔だった。それと、何故そんな所に注射器が入ってる。


「それで誰と契約を?」

「……」


 やっぱり言うしかないようだ。というか、言わないと今度こそやってきそうな気がした。


「えっと……和気巫女です」

「誰が脇巫女ですって?」

「……なん……やと?」


 後ろから凄まじい殺気を再び感じた。俺は恐る恐る振り向くと、仁王立ちをしている博麗と、その後ろで呆れた顔をしている流花と花神楽がいた。


「や、やぁ、博麗。だ、誰も和気巫女だなんて言ってないよ?」

「あら。じゃあ、さっきのは聞き間違えかしら?」

「そ、そうだよ。聞き間違えだよ」

「ふーん……」


 ……。


「嘘つくんじゃない!」

「ごはぁっ!」


 博麗はどこからか祓い棒を取り出して俺の顔面を思い切りぶん殴る。その勢いで俺は椅子から落ちてぶっ倒れる。それを見た流花と花神楽がため息をつく。


「代ってなんていうか……」

「学習能力がないな」


 学習能力がないんじゃなくて、ただ単にタイミングが悪いだけだ。俺だって本人の前まであんなことは言わねぇよ。……それもそれであれだが。


「あ、頭があぁぁ……」


 後頭部を手で押さえながらその場で悶える。さっき倒れたときに後頭部を床に強打した。どれくらいの痛さかというと、前に紫さんに墓石を落とされた時の痛さ。


「自業自得よ」


 博麗はそう言って、さっき俺が座っていた椅子に腰をかける。


「永琳。私たちを呼び出したみたいだけど、何か用?」

「えぇ……一応、ケガの具合とかを見ようと思ったけど……その様子じゃ大丈夫そうね」


 永琳さんは苦笑する。だから、流花たちもここに来たのか。……あれ? それなら花神楽は来なくてよかったのでは?


「そう。それじゃ、あそこに寝転がってるバカ犬を」

「誰がバカ犬だよ」

「いたっ」


 俺は起き上がって博麗の頭を叩く。いつもなら叫んでる所だが、ここは診察室なので自重。さっきまで自重してなかったくせにとかは知らない。……後頭部がまだジンジンする……


「いきなり何すんのよ!」

「お前と同じことをしたまでだ」


 同じって言っても俺は軽く叩いただけだけどね。


「あんた、自分が」

『師匠ー。患者さんが来ましたよー』


 博麗の言葉を遮るように廊下の奥から鈴仙の声が聞こえた。永琳さんはそれを聞くと分かったと、大声で返事をした。そういえば、ここ診療所でもあるんだっけ。


「みんなごめんなさい。少し、茶の間の方で待っていてくれませんか?」

「患者が来たなら仕方ないわよね」


 博麗は立ち上がって、部屋から出て行く。なんだアイツ。今日は随分ところころ態度というか、色々と変わるな。


「代、私たちも」

「ん? あ、あぁ。分かってるよ。永琳さん頑張ってくださいね」

「ありがとうございます」


 永琳さんは微笑みながらそう言った。やっぱり、永琳さんの笑顔は美しい。俺はそう思いながら、流花や花神楽と一緒部屋を出て行った。






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