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花神楽と

流花がやや無双気味だが気にしない。





 ―数日前―




「さっぱり分からないわ……」


 紫は本を見ながらそう呟く。手元には数冊の本が無造作に積み上げられていた。


「お探しの本は見つかったのかしら?」


 と、本棚の方から紫髪の少女が歩いてきた。手には数冊の本が抱えられている。


「あら、パチュリーじゃない。見つかったは見つかったわよ」

「そう」


 パチュリーは近くにあった椅子に腰をかける。そして、手に抱えていた数冊の本を机の上においた。


「それにしても、貴方がここに来るなんて珍しいじゃない。それも、調べ物をするために来るなんて」

「私にだって1つや2つくらい分からないことはあるのよ」

「あら、そうなの?」


 パチュリーはクスクスと笑いながらそう言った。


「そういえば、さっき何の本を探してたのかしら?」

「何でもいいじゃない」

「あら、教えてくれないの? あんなに目を凝らして天人の本を探してたのに」

「知ってるんじゃない」


 紫はばつの悪そうな顔をする。パチュリーに何の本を探していたのか知られていて嫌だったのだろうか。


「それで、なんで天人の本なのかしら? もしかして、またあのワガママな天人にでも悪戯するためかしら?」

「違うわよ」

「じゃあ、なぜかしら?」


 パチュリーはそう言いながら、本を手にとり開く。


「貴方、確か魔法使いだったわよね?」

「そうだけど、それが何か?」

「……なら、本を探すより貴方に聞いた方が早かったわね」

「?」


 紫は本をおき、パチュリーの方へと歩み寄った。そして、机越しに質問をする。


「貴方に聞きたいことがあるのだけれど、いいかしら?」

「何かしら?」

「外のまた外に広がる世界……そこに純白の翼を生やし、頭の上に光輪がある天人がいると聞いたことがあるのだけど、何か分かるからしら?」


 パチュリーは読んでいた本を閉じて紫の方へ向いた。


「多分、それは天使ね」

「天子?」

「天"子"じゃなくて天"使"よ。天からの使いと書いて天使。簡単に言えば神の使いかしらね」

「なるほど……」


 紫は黙り込む。そして、しばらくしてからまた話始めた。


「ねぇ、パチュリー」

「何かしら?」

「もしもよ。もしも、その天使とやらがここ、幻想郷にいたとしたらどうするかしら?」

「それなら是非ともレミィに会わせてみたいわね」

「そう」


 紫はニヤリと笑みを浮かべる。


「なら、会わせてみましょうか?」

「え?」





◆◆◆◆◆




「く……ちょこまかと!」

「甘いわよ」


 弾幕を放つ代とそれをひらりとかわす霊夢。霊夢と代の弾幕勝負が始まってから1時間近くになる。代は疲れの色を見せ始めているが、霊夢はまだまだ余裕の表情をしている。


「さっきから同じような弾幕ばかりね。さすがにあきてくるわ。もう、そろそろ終わりにしましょ!」

「ぐっ!」


 霊夢の放った弾幕を刀を盾にして耐える代。しかし、耐えきれずに吹き飛ばされてしまう。


「がっ!」

「これで終わりよ! 宝具『陰陽鬼神玉』!」


 巨大な陰陽玉が出現し代を襲う。代は即座に立ち上がり、刀を構えた。


「調子に乗るなぁぁあ!」


 代は大声を上げながら刀を振り下げて、陰陽玉を真っ二つに斬った。霊夢をそれを見て驚く。


「なっ!」

「隙あり!」

「!」


 霊夢に向かって斬撃を繰り出す代。霊夢は斬撃をまた紙一重に避ける。


「クソ……これでも当たらないのか!」

「あたりまえでしょ。攻撃の仕方が単調なのよ」


 と言っても、今のはヤバかった……なんとか避けられたけど、次来たら避けられるかどうか……


「ま、犬にしてはやるじゃない」

「犬……だと?」


 代は歯軋りをしながら、刀を握っている手に力を入れた。


「えぇ、犬よ。あんたはただの犬! だからちゃっちゃとやれなさい! 霊符『夢想封印 集』!」


 札の弾幕が代に向かって放たれる。だが、代は避けようとはしない。


「(避けない? あきらめたのかしら? いや、それはないはず。なら何故?)」


 代は刀を翳し、そして刃先を霊夢へと向ける。


「……白銀『××××』」

「え? なっ! きゃぁぁあ!」


 無数の斬撃が札の弾幕を打ち消して霊夢を襲った。霊夢は避けきれずにあたり、そのまま落っこちた。


「ー……こんな奴に負けるなんて……」


 霊夢は代を見上げてそう言い放った。代はただ、霊夢の倒れている姿をじっと見下ろしている。


「まさか、あんなスペカがあったなんて……」


 まったく見えなかった。気づいたらもうあたっていた……一体、あれはなんだったのよ。


「あれ? 霊夢負けちゃったの」

「! だ……」


 霊夢は立ち上がりながら声のした方を向いた。そして、絶句する。そこには槍を持ったあまりにも形容しがたい、白い大翼を背中に生やした流花がいた。


「アナタは……さっきの」

「やっほー代。仕返しに来たよ」

「ぐっ!?」


 流花は瞬時に代の懐に入り、持っていた槍の石突で腹を突っつく。


「私ってさ、負けるのが大嫌いなのよ」

「がっ!」


 そのまま柄の部分で、代の脇腹をぶん殴る。その勢いで、代は地面に叩きつけられた。


「ぐうっ!」

「神光『ミカエルの問いかけ』!」


 流花は槍を空高く掲げる。すると、どこからか無数の炎が現れ1つの巨大な剣へと形を成す。そして、その巨大な剣は代をめがけて振り下ろされた。


「う、うわぁぁあ!」


 代は炎に飲み込まれ、そのまま数メートル吹き飛ばされる。それを見た流花はため息をつきながら、地上に降りた。


「まったく……これだから代は……」

「おっと!」


 流花は気を失う。倒れかけたところを霊夢が抱えた。


「一体、なんだったのよ……」


 雪が降ってきたり、代が強くなってたり、大きな翼を生やしたコイツ出てきたり……もう、わけ分からないわよ……


「おーい、霊夢ー! 大丈夫かー!」

「ん? あら、妖夢」


 林(だった場所)の方から、妖夢が走ってきた。


「大丈夫よ」

「大丈夫に見えないんだが……」

「私よりもコイツとあそこで寝っ転がってる犬の方が危ないかもね」

「なら、早く優曇華さんの所に連れて行かないと」

「そうね。じゃ、よろしく紫」


 霊夢はやや右上を向いてそう言った。すると、スキマが開き、中から紫が顔をだした。


「ゆ、紫様!?」

「私がいるってよく分かったわね」

「伊達にあんたと長く付き合ってるわけじゃないわよ。それよりも、コイツとあそこの犬を永遠亭に運んでくれない?」

「仕方ないわね」

「「へ?」」


 紫は代と霊夢、妖夢の足元にスキマを開いた。


「ちょ! 紫いぃぃ……」

「なんで私までぇぇぇ……」

「ごゆっくり♪」


 3人にはそのままスキマへと落ちていった。




◆◆◆◆◆




「ぐぉぉお!」


 もう少しだ! もう少しで俺の時代がくるっ! だから頑張れ俺ぇええ!


「うぉおお!」


 パキン。鎖の切れる音がする。


「キタァァア!」


 ガッツポーズをしながら起き上が……るでいいのか? とにかく、来たぜ! 俺の時代っ!


「どうだ! これが俺の力だ!」


 どや顔しながら叫ぶ。おそらく、ここに誰かいたら、変人扱い間違いなしだろうが、大丈夫。ここには誰もいないから、叫んだって何も言われないさ。


「その程度か」

「んだとゴ……らぁ?」


 ……前方に白髪幼女発見。


「何をしている?」

「失意体前屈亜種改」

「意味が分からない」


 テンプレ乙。つか、何故に幼女がいる。しかも、同じ白髪って何? え? もしかして、俺そんな願望……


「いやいや絶対にない。それはない」


 あってたまるか。


「はぁ……まったく、主は……」


 なんかため息つかれたよ。……って、


「あ、あ、主ぃぃい!?」


 それは一体どういうことだ! 俺はこの幼女の主になった覚えはないぞ! そもそも、なりたいとも思わんし!


「お、おい! 主って一体どういうことだ!」

「自分の愛刀のこと忘れたのか?」

「は?」


 愛刀? 花神楽のことか? いやいや、花神楽は関係な……いや、待てよ。そういえば、あの幼女、どことなく髪の色が鞘の色と似てるような……まさか


「……もしかしてお前、花神楽?」

「そうだが」

「……な、なんだってー!」


 驚きのあまり声が裏返る。花神楽が幼女だと? そんなバカなっ! 認めん。俺は認めんぞー!


「認めたくないならそれでいい」

「勝手に人の心を読むな!」

「知るか犬」


 ……キレていいかな? いや、ダメだよね。幼女にキレちゃダメだよね。うん。キレちゃダメだ。


「俺は犬じゃないよ。俺は」

「じゃあ、わんこ」


 ……ぶちっ。


「わんこじゃねぇぇえ! 犬神だぁぁあ!」

「知るかそんなこと」

「知れぇぇえ!」

「相変わらず、うるさい奴だな」

「てめぇ! 図にっ」


 待て。落ちつけ俺。深呼吸だ。吸ってー吐いてー吸ってー吐いてー。よし。落ち着いた。


「ゴホン。とにかく、君は花神楽なんだね?」

「そうだ」

「なら、何故ここにいるんだ?」

「何故って……ここは白雪之花神楽の中だぞ? 私がいてもおかしくないだろ」

「あぁ。確かにおか……しいだろ!」


 白雪之花神楽の中ってどういうことだよ! まるで意味が分からんぞ!


「はぁ……本当に駄目な主だな。そんなことにも気づけないだなんて」

「目が覚めたら、白雪之花神楽の中でしたとか気づけるわけないだろ! その前に鎖で雁字搦めになってたってのに気づけるか!」

「はいはい。そうでしたね。ま、それをやったのは私だが」


 ……あいつ今、なんて言った?


「少しの間、主の身体を乗っ取らせてもらった。その時に主に暴れられると困るから、やったのさ」

「……は?」

「ま、その時は気絶してたから、今思えば必要なかったかもな」


 つまり、あれは花神楽がやったってこと?


「さて、そろそろ時間だ。って、また何をしてる?」

「失意体前屈亜種改弐」

「……もういいや」


 突っ込むことをあきらめたか。情けない奴め。


「って、うお!?」


 体が急に光始めた!? なんだこれは!?


「お、おい! これ!」

「安心しろ。ただ、魂が元の身体に戻り始めているだけだ」

「できるかー! って、あれ?」


 花神楽の身体も光始めてるぞ!?


「ようやくまた……」

「お、おい! お前それ!」

「気にするな」


 いやいや! めちゃくちゃ気になるから! うぉっ! 光が眩しさをました!?


「じゃあな」

「ま、まだ! 聞いてないこ」


 代が言葉を言い切る前に、身体が光に包まれ消えてしまう。それに続くように花神楽も消えた。






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