雪のちグングニル
雪の次に降るのはグングニル。
「ここどこだよ……」
俺は頭をかきながら、そう呟いた。なんとか流花たちから逃げることは出来たのだが、そのかわりに迷ってしまった。自分が今どこにいるのか分からない。
「吹雪が収まったと思ったら、これだよ……」
さっきまで吹き荒れていた吹雪は、嘘のようにバッタリとやんだ。今はゆらゆらと雪が静かに降っている。
「はぁ……」
深い溜め息をついた。流花の奴、まさか自分で不起こした不祥事を、俺のせいにしてくるなんてな……しかも、逃走したとかやってないことまで言いやがって。
「いや、逃走はしたのか」
今まさに現在進行形でやってるしな。というか、しざる終えないし。
「とりあえず、流花達に見つからないようにしないと……」
さっきは運よく蒔けたが、次も蒔けるとは限らないしな。
「よし! ならさ」
「見つけたぞ!」
「ゲッ! バカ犬!」
その場から歩き出そうとした瞬間、椛が空から降りてきた。って、椛も空を飛べたんかい。
「バカ犬じゃない! なんど言えば」
「すたこらさっさと!」
「あ! 待て!」
待つかよバーカ。お前如きに捕まってたまるかっての! 椛になら、走りでは勝てる……はず。
「藍妖怪の時は捕まったけど、今回はそう簡単に捕まらないぜ!」
「クソ! 予想以上に早い!」
あたりまえよ。伊達にこの数週間、幼女や幼女、時たま流花に追い回されてたわけじゃねぇよ。
「ハハハ! 俺、韋駄天!」
「く、追いつけない……ならば!」
「は?」
椛が刀を鞘から抜いた。アイツ、一体何する気……って、まさか!
「おまっ! 無抵抗の奴に」
「山窩『エクスペリーズカナン』!」
「やっぱりかぁぁあ! うぉ!?」
コイツ、弾幕撃って来やがった! マジでふざけんなよ! って、ヤバいヤバい! 避けなきゃ! うぉい! 今、耳にかすったぞ! ちょ、まだくんのかよ!
「くそ! 埒あかねぇ!」
目には目を! 弾幕には弾幕を! 不本意だがこうなったら、仕方ない。俺も弾幕で対抗してやる!
「行くぞ! 花神楽!」
弾幕を避けながら、花神楽を鞘から抜き構える。狙う一撃必殺!
「剣符『神楽花吹雪』!」
椛に向かって弾幕を放つ。一振り、二振り、三振りと花神楽を振りかざして、衝撃波を打ち出す。……これ、一撃必殺じゃないよな。
「ふん!」
「なっ!」
そ、そんな! 俺の一撃必殺の弾幕を簡単に避けただと!? くっ……思ってた以上に強いな……
「そんな単調な弾幕、妖精でも簡単に避けられる!」
「なん……だと?」
妖精でも簡単に避けられる……だと? そんな……これが俺の中で一番、最強のスペカなのにっ……
「……何しているんだ?」
「失意体前屈」
「意味が分からない」
だろうね。
「……あの、椛さん。弾幕勝負に降参ってありますか?」
「さぁ? したことはないが、あるんじゃないのか?」
「じゃあ、降参で」
「……あきらめるの早いな」
仕方ないでしょ。だって勝てないんだもん。勝てないと分かった以上、抵抗するだけ無駄だしね。
「まあ、いい。ほら、立ち上がれ」
「りょーかい……」
俺は椛に言われるまま立ち上がる。まさか、椛がこんな強いとは……今までバカ犬とか言っててすみませんでした。
「その刀をこっちに」
「はいはい。分かりました……」
俺は花神楽を鞘に戻して椛に渡す……
「とでも思ったか?」
「は?」
「隙あり! 疾走『速い者勝ち』!」
「な、なぁ!?」
スペカ宣言したと同時に走り出す。勝てないなら逃げりゃいんだよ! 犬神、尻尾を巻いて逃げるってな! ……哀しくなってきた……
「ま、待て!」
さーせん。無理です。待てません。
「そんなわけでサヨウナラ!」
あっという間に、椛が小さくなっていった。このスペカって、こんな使い方もできるのか。中々便利だな。
◆◆◆◆◆
「まったくもう……一体、この異変を起こしたのは誰なのよ……」
チルノじゃなかったし、レティはそもそも夏だからいないし……だとすれば、やっぱり、幽々子かしら……
「……めんどくさいけど、今から白玉楼に行って」
「あれ? 霊夢じゃないか」
「あん? あら、妖夢じゃない」
と、目の前から妖夢がやってきた。妖夢がいるってことは、幽々子ではないってことか……
「何してるのかしら?」
「言わなくても分かるだろ」
「まあね」
妖夢も私と同じ目的か……
「まったく……初夏だというのに、なんでいきなり雪なんか……」
「知らないわよ。とにかく、目的は一緒みたいだしとっとと探すわよ」
「あぁ……そうしないと庭の手」
『だぁぁあ! こっちくんなぁぁあ!』
『逃がさないよ!』
「「え?」」
2人の真下を、犬神と片翼天狗が猛スピードで通り過ぎていった。霊夢と妖夢は唖然として、2人が去って行くのを見ていた。
◆◆◆◆◆
「だぁぁあ! こっちくんなぁぁあ!」
「逃がさないよ!」
椛から逃げ出せた直後に、流花に見つかった。弾幕勝負を仕掛けようとしたのだが、コイツにはかなわないことを思い出し、とっさに逃げ出す。
「つまり、また追われてんだよ!」
「さぁ! 大人しくお縄に頂戴しろ!」
「断る!」
「あっそ。じゃあいいや」
「は?」
すごく嫌な予感がする。
「……まさか!」
「神殺『ミストルティン』!」
「ふ、ふざけんなぁぁあ!」
流花は黄色い槍を放ってきた。俺はとっさに避ける。黄色い槍は俺の肩をかすれて、後ろの木に直撃した。
「おぉー。よくよけたねー」
「そりゃどうも!」
あんな一直線な攻撃、誰でも避けられんだろ。……もっとも、一回その弾幕にやれた俺が言えることではないが。
「だがこれで」
「じゃ、次いってみようか?」
「……おうのう」
流花の頭上に、何やらとてつもなくドデカい奇妙に曲がった槍が現れた。うん。すげぇ、見覚えある。
「準備OK?」
「ノー」
「いいんだね。じゃあ行くよ!」
……これは無理。マジで死んだわ。
「聖天『グングニル』!」
「う、うぉおお!」
流花のスペカ宣言と同時に猛ダッシュ。あれ、もはや弾幕とかスペカとかじゃねぇだろ! どっからどう見てもただのどでかい槍だよ!
「逃げても無駄だよ!」
「見りゃ分かるわボケェ!」
弾幕ならまだしも、あんなドデカいもんが降って来たら誰だって避けられんわ! やべ! どんどん近づいてきてるよ!
「ぬぉおお!」
とにかく、ひたすら走るしかない! そうするしか方法はない!
「って、うぉ!? いだっ!」
ずっこけたー! ちょ、こんな時に転けるとか何!? 何かのコントですか!?って、そんなこと言ってる場合じゃ……
「あ」
……みんなは大事なことをするときは、転ばないように気をつけよう。転ばぬ先の杖ってね。
「ぎゃぁぁあ!」
ピチューンという謎の音と共に、俺の意識は吹っ飛んだ。というより、体ごと吹き飛んだ。そういえば、こっちに来てからは逃げる、叫ぶ、やられるの連続だよな。
◆◆◆◆◆
「れ、霊夢! 今の見たか!?」
「見たわよ! 何あれ!?」
いきなり空からとてつもなくドデカい槍が現れて……!
「あの場所へ行ってみましょう!」
「あぁ!」
2人はドデカい槍が落ちた場所へと向かい始めた。




