2012年、人類滅亡、七日間の変身過程。
短編を書きたいというのと、変身(獣化というらしい)ものを書いてみたいという気持ちが混ざりあってできた作品です。
獣化が入っているので苦手な方とかは読んでも自己責任でよろしくお願いします。
二〇一二年、マヤ文明曰く人類が滅びるとされる年、
ペキッ
骨が割れるような音が僕の体のどこかからした。
始めは体がこっているのかと思い、無視した。
今日は近くの広場で炊き出しが行われるらしい。僕らホームレスにとって、それは有り難いことだった。移動に無駄な体力を使わずにすむし、なんと言ってもタダでちゃんとした食料が手に入る。
予定時刻、僕は炊き出しの会場に向かった。
炊き出し会場は僕と同じような人が並んでいて、そこからは劣等感や諦めの念などの負の感情が漂っていた。それだけではない、年々ここに集まる人間が増えてきているのだ。
かつて日本はバブルと言う恵まれた時代があったらしい。だが僕はその時代に生まれていないため、それがどのようなものだったか知らない。この異常とされる光景が、僕にとっての普通の日常なのだ。
係りの女性から煮物を一杯いただく、始めはこの事に劣等感を感じていたが、今は全くといっていいほど抵抗がない。
係りの女性の笑顔、それは僕を哀れな目で見ているようにしか見えなかった。
とりあえず、邪魔にならない場所で温かい煮物をいただく。
薄味であまり旨いとは言えない。だが、この瞬間だけが、普段ゴミを食らっている僕を人間に戻してくれていた。
こんな生活を続けるのには精神的な限界がある。劣等感と空腹感の繰り返し、空腹感はよいが、劣等感だけは耐えられなかった。
だが、もうそれももうすぐ終わる。なぜなら今年は人類が滅びるとされる年だからだ。
次の日、僕の体に異変が起きた。
パキッ、パキッと、体からゆっくりと音がなるのだ。そして、その度に僕は激痛を味わう。
もしかしたらこれが人類滅亡の理由なのかもしれない。恐らく、他のところでもこの症状が起こっているのだろう。
もうすぐ僕は死ねるのだ、そう思うとなぜか嬉しくなった。
この肉体的苦痛に耐えれば、僕は精神的苦痛から解放される。それも、自殺のような愚行によってではなく、合法的な理由で。
この日は激痛により外に出ることはできず、テントのなかで一人こもっていた。
あの音がなってから三日目、僕の体に異変が起こった。
少し顔と尾てい骨が前方に突き出た気がするのだ。
もしやずっと鳴り続けているこの音は、骨が変形する際に鳴る音ではないのかと気付いた。
そして、今日もまたテントにこもる。
四日目、僕は余りにも頭がかゆくなり頭をかきむしった。
そこでまた異変、髪がバラバラと抜け落ちていくのだ。終いには一本の髪も残らない、丸剥げの頭になってしまった。
この時点で、もしやこれは原爆のような放射能によるものなのではないかと思った。原爆が投下されて数日たつと髪が抜け落ちると言う話を聞いたことがあったからだ。
どこかで放射能が撒き散らされたのだろうか。それならば昨日からの身体の変形も頷ける。
五日目、骨の変形する音と共に獣じみた毛が生えてきた。
体がむず痒くなりかきむしったが、昨日とは違い全く抜けなかった。
僕には不安が襲ってきた。
もしかしたらこれは、死ねるのではなく獣になろうとしているのではないだろうか。
もし、そうなのだとすれば、外に出られなくなる。餓死だけは断じて避けたかった、餓死は自殺の次に情けないような気がしたからだ。
だが、もしかしたらマスコミに取り上げられて今の生活から抜け出せるのでは、いや、だがそれは鑑賞用動物に成り下がるに等しいだろう。やはり、この状況は良くはないと悟った。
だが、激痛により動くための体力は奪われていたため、今日もテントにこもった。ああ、なんと情けないのだろう。
六日目、ついに体をかきむしる体力も底をつき、動くことができなくなった。
ただ、ハアハアと呼吸をするのが精一杯である。
今日はさすがに思考することもできなかった。
今の僕には時間が流れるのを待つしかなかった。
そして今日も、パキパキと言う音と共にテントで一日を過ごした。
七日目、ついに僕は激痛から解放された。だが、後遺症は体に残っている。
人間の手足と平爪、これ以外はもはや獣といった形でしかなくなっていた。
激痛から解放されたためか、少し体力が戻ってきた。
空腹に耐えきれずにテントから出る。騒ぎが起こるとか言う不安はなかった、いや、考えていられなかった。
僕は隣の川に行き、ガブガブと水を飲んだ。きれいな水ではなかったが、腹にものが入る感覚が嬉しかった。やっと草やテントにへばりつく露で水分をとらなくてすむのだと実感した。
揺らぐ水面に顔が写る。自分の顔ではなく、犬のような他人の顔が写っていた。それが自分だと気付くのには数分かかった。
水を飲んだにも関わらず、僕の腹は警告音を発し続けている。
もう、姿なんかどうだっていい、何かを食べたい。その一心で僕は町へと向かった。
二足歩行が可能だったので、町に行くにはそう苦労しなかった。いや、そんなことはどうでもいい。
僕は自分の目を疑う。前まで賑わっていた町には人がいなく、代わりに動物たちがうろついていたのだ。
動物だけでなく、僕のように中途半端に人の姿をした獣も、困惑の表情をうかべながら町をうろついていた。
このとき、僕は確信した。
マヤ文明の人類滅亡の予言は当たっていた。だが、それは「死」と言う形ではなく、「変身」という形だったということを。
そして僕は今日もいつも通り、食料を探して町をうろつく。
結局、人間も技術がなければ、ただの「動物」に過ぎないのだ。
もし不快感を与えてしまったらごめんなさい。
正直、私自信も後悔しています。
何でこんな訳の分からないものを書いたんだろう。
そんな気持ちです。
ですが、もし楽しんでいただけたのなら幸いです。
あと、感想を書いていただけると嬉しいです。
読んでくださり有難うございました。