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第七話

 そのあとは何も言わずブランコを二人で漕いだ。途中からは酔って気持ちが悪かったけれど止めてしまったらこのまま帰らなくてはいけなくなりそうで気持ち悪さを堪え漕ぎ続けた。

 そんな努力は虚しく日は暮れ、ただでさえ薄暗かった公園はすっかり暗くなりお互いの間に帰宅の空気が漂う。

 ブランコを漕ぐのをやめる。次第に揺れが小さくなっていく。止まる寸前、香澄が口を開く。

「授業参観、史乃くんのところはどうなりそう?」

「親は来ないだろうし声もかけないかな。話したくないし。香澄さんは?」

「私も同じようなものかな」

 もう互いに弱みを晒しあっていて破綻した家庭のことも素直に話せる。

「土曜日にやるってなると親が来ないところは少数だろうから憂鬱だよ」

「本当にね」

 俺より大きく漕いでいた香澄のブランコももう止まりそうだ。香澄は惰性で揺られながら流れるように言った。

「じゃあサボっちゃう?土曜日の授業参観」

 えっと声が漏れていた。

「ズル休みってこと?」

 香澄がくすくすと笑う。

「その言い方子供っぽい。サボりって言った方がかっこいいでしょ」

 つい笑ってしまう。

「その考えも大概子供だけど」

「それで史乃くんはどうする?サボるの」

「いいよ」

 香澄がこちらをちらりと見る。

「休んでしまいたいぐらいだったけど、一人で休む勇気はなかったんだ」

「そっか。じゃあサボってどっか行こうよ」

 間抜けにもまたえっと声が漏れる。

「いいけどどこ行くの?」

「海行こうよ、海」

「この冬の時期に?」

「うん」

 憂鬱なことから逃げだせるんじゃないかという高揚感とその逃げ先が冬の海だというおかしさが混ざって声を出して笑ってしまう。

「いいね、一緒に冬の海に逃げようか」

 香澄が勢いよくブランコから飛び降りてこちらを向く。

「じゃあそういうことで。今日はそろそろ帰ろうよ」

「暗くなったし送るよ」

 止まったブランコを少し漕いでからその勢いのまま俺もブランコを飛び降りる。

 香澄は少し迷った様子を見せてから歩き出した。

「ありがとう。じゃあお願い」


 そうして香澄と二人で歩く。少しの間歩くと香澄が古びた四階建てのマンションの前で止まった。

「ここだから、私の家。ボロいって思った?」

「俺の家といい勝負だよ」

「本当に?」

「残念ながら本当に」

 互いに小さく声を漏らして笑う。それは屈託なんてない、純粋なものだった。


今後は毎日投稿でなくなります。楽しみにしてくださってる方申し訳ありません。日曜日、火曜日、木曜日に投稿のペースでいこうと思いますのでよろしくお願いします。

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