第4話:炎の色は嘘をつかない、あるいは聖女の「不純物」について
王立エリュシオン魔法学園。 この国のエリートが集まるその場所は、私にとっては学び舎というより、巨大な「サンプリング会場」にしか見えなかった。
「見て、セリーヌ様よ……」「爆発令嬢、よく入学できたわね」
廊下ですれ違う生徒たちのヒソヒソ声。 前世の私なら『廊下は走らない!あと、私語を慎みなさい!』と一喝するところだが、今の私は上機嫌だ。なぜなら、脇に抱えた鞄の中には、カスピアンに特注した「ホウケイ酸ガラスの試験管セット」が鎮座しているのだから。
「――皆様、注目。今日は魔法適性の測定演習を行う」
演習場に現れたのは、ユースタス殿下と、その隣にぴったりと寄り添うリナだった。 殿下は私を冷ややかな目で見据えると、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「セリーヌ、貴様は一番最後だ。せいぜい無様な爆発を披露しないよう、リナの『聖なる魔力』を拝んでおくがいい」
「お気遣いありがとうございます、殿下。……でも、『だが断る』と言いたいところですが、観察(データ収集)のために拝見させていただきますわ」
リナが前に出る。彼女が祈るように手をかざすと、柔らかな黄金色の光が演習場を包んだ。生徒たちが「おお……」「なんて清らかな……」と、うっとりした表情でその光を浴びる。だが、私の鼻は誤魔化せない。
(……やっぱり。この光、特定の周波数のエネルギーじゃない。揮発性の魔力粒子に、脳内のドーパミン受容体を刺激する『有機化合物』の情報を乗せているわね。これ、魔法というより……広域散布型の薬物に近いわ)
リナの「聖女の力」の正体に確信を持った私は、自分の番が来ると、しずしずと中央へ歩み出た。
「さあ、爆発令嬢!貴様の無能を証明してみせろ!」
「殿下、一つ訂正を。私は今日、爆発を起こしに来たのではありません。……『真実はいつもひとつ』であることを証明しに来たのです」
私は鞄から、カスピアン特注のガラス棒と、数種類の「粉末」を取り出した。
「な、なんだそれは?魔法媒体(杖)ではないのか?」
「これはただの金属塩ですわ。……行きますわよ」
私は魔力で、ごく小さな、しかし超高温の「無色の炎」を作り出した。そこに、用意した粉末を次々とくべていく。
――シュアッ!
瞬間、炎が鮮やかな「深紅色」に変わった。
「なっ……火魔法の色が変わった!?」
続いて粉末を変えると、炎は「黄緑色」に、そして「青紫色」へと変化していく。演習場に、魔法陣も使わない鮮烈な光のショーが繰り広げられる。
「これは『炎色反応』。リチウムは赤、バリウムは黄緑、カリウムは紫。魔法の『属性』などという曖昧なものではなく、そこに存在する『物質』によって光は定義されるのです」
驚愕する生徒たち。私は炎を消すと、リナの方を振り返った。
「リナ様。あなたの『黄金の光』……先ほど私の簡易分析(目視)では、わずかに『ナトリウム(黄色)』と『ストロンチウム(紅)』の不純物反応が出ていましたわ。……聖なる力というわりには、ずいぶんと『化学的』な構成をしていらっしゃるのね?」
「えっ……?な、何を……私はただ、神様に祈って……」
リナの顔から血の気が引く。周囲の生徒たちも、今の私の「論理的なデモンストレーション」を見た後では、彼女の光を無批判に崇めることができなくなっていた。
「セリーヌ……貴様、リナを侮辱するか!」
「いいえ殿下。私はただ、事象を分析したまでです。……ああ、そうだ。殿下の火魔法も、次はもう少し『酸素比率』を考えたほうがよろしいですよ?不完全燃焼で一酸化炭素が出ていますわ。……『お前はもう、中毒んでいる』……なんてことにならないようにね」
私は優雅に一礼し、呆然とする二人を置いて演習場を後にした。
校舎の影。そこには、面白そうに壁に寄りかかっているカスピアンがいた。
「くく……ひどい女だ。聖女の奇跡を『不純物』呼ばわりか。君、性格のステータスを全部『知能』に振っただろう?」
「最高の褒め言葉として受け取っておくわ、カスピアン。……それより、頼んでいた『試薬』の調達は?」
「ああ、できているよ。……これを使えば、彼女の『聖なる力』がただの毒薬だと暴ける。……君は本当に、この国をひっくり返すつもりかい?」
「まさか。私はただ、『嘘のない世界』で静かに実験をしたいだけよ」
私は、リナが光を放っていた場所に残った「残留魔力」を、試験管に回収した。乙女ゲームのシナリオ? そんなもの、私が書き換えるまでもない。理科の法則に従わないものは、勝手に自滅していくのだから。
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