不思議ちゃんの冒険6
「こんにちは、ジャンさん」
ジャックが元気いっぱいに挨拶します。
「ああ、こんにちは。ベルナール」
背の高い、締まった体のたぶん30ぐらいのおじさんがニッコニコの笑顔で出てきます。
でも、あれ……この人たしかベルナールとか呼んでましたけど……。
「こんにちはベルナール、待ってたよ、早く入って」
少年は入り口で戸惑ってます。
「ベルナール、なに気分でも良くないのか」
少年は重い口を、やっと開きます。
「ジャンさん、ぼくはベルナールなんかじゃないよ。ぼくジャックなんだけど」
ジャンさんは両手を上げて、あの「お手上げ」のポーズをします。
「大人をからかったりして、まったく……。いいから入りなさい」
ジャックとアリスは家に入ります。
中は意外に広くて、奥にまだ何部屋かありそうです。
2人はテーブルに並んでつきます。
アリスがジャックの脇腹を突きます。
「ねぇ、あんたがベルナールってどうゆうことよ。あのジャンってオヤジ、人の名前間違えてるわよ。失礼だわ」
ひそひそと囁くアリスに、ジャックが困った顔をして答えます。
「うん、でもぼくだってさっき、アリスと会ったとき、自分の名前ベルナールって、間違えちゃったんだから、ジャンさんのことは責められないよ」
人のよさそうな顔でジャックが言うのを、アリスはムッとして聞いてます。
「ベルナール、このカワイイお嬢さんは誰。カノジョか? なんて名前?」
ジャンさんがテーブルにジュースの入ったコップを並べると、笑いながら訊いてきます。
「この子はアリス、アリス・ド・マーニュ。友達だよ」
ジャックの慌てた顔が赤くなってます。
「ふーん、そうかぁ、友達ね」
ジャンさんが楽しそうに言いながら、テーブルについて2人と向かい合いました。
「ちょっと、あんた! 黙ってきいてりゃ。あたしはアリス・ド・マーニュなんかじゃないわよ! あんまりふざけてるとウラ拳かましますよ!」
アリスの目がキッとジャックを睨みます。
「え、そんな……アリス。無茶苦茶言ってイジメないでよー」
と同時に、一瞬にしてアリスの裏拳が決まります。
椅子から飛び落ちるジャックの体。美少年の彼が悶絶してます。
「あたしは青い惑星のアリス。ジャックのばか! ジャンさん、この子ヘンなところでふざけるんですね。イヤな奴!」
つづく