不思議ちゃんの冒険4
「……」
「……」
アリスの唇が濡れて光ってます。
それをジャックが恥ずかしそうに見ています。
沈黙のひととき……。
「なんであんなことしたの、ア……」
「そうだジャック! のど渇いた。なんか飲むもんちょうだい」
アリスがジャックの言葉を遮るように、いきなり言いました。きっと、さっきのことの照れ隠しなんでしょうけど……。
「ねぇ、飲むものぉー! 早くちょうだいよ」
ジャックはかわいそうに、こんな大自然のなかで飲むものを買ってくることはできません。
「ムリムリ。アリス……イジメないでよ」
美少年ジャックの目が、もう涙目になってます。
長い睫毛を涙の雫が渡って、うすいピンクが差した頬に流れていきます。
「あんた、泣いてんの? てか、あんただって困るでしょ、このまま水分とれないと!」
それは正論です。
「ねぇ、どうするつもりなのジャック。あんたはここに来る前どうしようと思ったの? てゆうかさ、あんたはなんでここに来たの?」
これは「堂々めぐり」といわれる状況のようです。
「ぼくは……木こりのジャンさんに用があって、森に行く途中だったんだけど……ジャンさんとこはもう、そんなに遠くないから、向こう行ってから飲めると思ってたんだ。でも、アリスは今、水欲しいんでしょ……我慢して一緒に来てくれたら、ジャンさんの家で飲めると思うんだけど……どう、アリス?」
ジャックの目が、頼りなげにアリスを見ます。
「そう、そうだったんだ……。あたしジャックがそこまで考えてないと思ったから。……あたし、ほんとは、のどなんか渇いてないんだ。ジャック、キレイなあんたをイジメたかったの。あたしのこの気持ち、分かってくれる? でも言っとくけど間違ってないから、あたしは」
アリスの目が、ジャックをしっかり見据えます。
「うん。わかった。じゃあ、一緒に行こう」
美少年ジャックの手が、アリスの手をとり、2人は歩き出します。
「ジャック」
「え?」
「……なんでもない」
つづく