不思議ちゃんの冒険37
「ふふ、幸せ? アリス」
アリスの前の扉が開く。
溢れ出す光。
と同時に流れ出す音楽。
まっすぐに延びる長い通路を、ゆっくり歩き出す。
隣には、失踪したままの父の代わりに妹のミントが腕を組んで歩く。
大好きないい歌が流れ、体中に視線を感じながら、ベルナールの待つ祭壇に進む。
ゆっくり流れる時間……このまま止まってしまいそうなぐらいに……。
「ふふっ」
誰?
さりげなくミントを見る。でも彼女ではない。
「ふふふっ」
また女の子の声……
後ろに仕える自分の守護精霊の誰かだろうか……でも声が彼女たちと違う。
「ふふっ」
気になる、まさかこれマリッジブルーなのだろうか……
「ふふ。幸せ?」
またする声。
音楽はちゃんと聞こえている。
「アリスお姉ちゃん、大丈夫?」
ミントがそっとささやく。
頷くアリス。
もうすぐそこに、ベルナールがいる。
音楽が終わりかけ、アリスの足が最後の一歩を踏み出す……
「ふふ、ふふふふっ。幸せなんだぁアリスは」
声のするほうに思わず振り向く。
すぐ左前の最前席から小さな女の子が振りかえる。……あ。
「知ってるでしょ、アタシを」
その眉間に刻まれてる、子供にはありえないぐらいの深い憎しみのあと。
ふふっ
つづく