不思議ちゃんの冒険3
「あれ……、あの子……」
アリスは向こうにたたずんでる少年に気づきました。
(あの子、どっかで見たことある。誰だったっけ……)
アリスは静かに目を閉じて、また首を後ろに反らせます。
(こうすると思い出せるから。……ジャック、そうジャックよ!)
アリスが少年のほうを見ると、いっぱいの笑顔でこっちに駆けてきます。
「ジャック、ジャック! あんた何でここに?」
少年がそれを聞いて、いきなり固まります。表情も見事そのまま……。
「どうしたの、ジャック。急に」
少年の顔が、笑顔から怪訝なものに変わりました。
「ジャック? なに言ってんの、ぼくはベルナールだよ。ねぇ、アリス」
少年の表情が心配そうなものに変わります。
「うそ、あんたはジャックよ。あたしが間違ってるわけないわ。そうよ、ジャック、あんたはベルナールじゃなくてジャックよ!」
少年が一瞬感電したみたいになると、また笑顔になってアリスに話しかけました。
「そう、ぼくはジャック、ごめんアリス、自分のことなのに間違えて。アリスが正しい。ありがとう、ちゃんと言ってくれて」
色白でブロンドの美少年が、アリスの手をとります。
「いいのよ。だれにも間違うことはあるんだから。ジャック……」
「え?」
「あんたってほんとキレイな子。あたし悔しくなるよ」
「そ、そんなこと、ないよ」
ジャックは戸惑います。(アリスは女じゃん。ぼく男なんだよ。それなのに悔しいなんて)
アリスの手がジャックの手を払って、彼のカワイイ唇に伸びます。
「なによ、この唇。ばっかじゃない、キレイすぎ。もう、ありえないんだから」
アリスの人差し指はジャックの唇をなぞって、そっとその間に入れられます。
「だめ! じっとして。キレイな顔……。憎らしいぐらい」
アリスは人差し指を抜くと、自分の唇に当てて、リップを塗るようになぞりました。
唇が濡れて、光ります。
「……」
「……」
つづく