不思議ちゃんの冒険26
「はっ」
アリスの体が一瞬戦慄する。
「どうされましたか、……アリスさま」
爺のラルフが心配そうに見つめる。
「大丈夫か? 顔色がヤバいようだけど」
隣から覗き込むように見るベルナール。
アリスは作り笑いをしてみせたが、誤魔化せないようだった。
「た、大変なんだ……あ、ごめん。なに言ってんだろう私……。……大変なんだ!! ……あーっ!」
2人の見てる前で、明らかに異常を起こすアリス。
そして彼らが言葉を失ってるとこに、アリスの体から父の――ルシファーに憑かれて失踪したセラフィム卿の――こもった不気味な声が「出て」くる。
「大変だぞ! ラルフ!! 私のあの可愛いミントが……ミントが!!」
思わず右手から霊剣を出すベルナール。
そして、もうどうすればいいやら、という顔をして、固まる爺。
「おお! ベルナール! 久しぶりだな。そなたも今聞いただろう? ミントが、娘が大変なんだ! ……恐れなくてよい。私は、私だから」
ベルナールの戸惑う表情。そして一応、霊剣は収められる。
「お、おいたわしゅうございます、ご当主さま……」
ラルフがアリスを見てやっと言葉を言う。
テーブルを挟んでソファーに座る3人。そのシチュエーションには、さっきまでとなんら変わりはない。
「ラルフよ……ちょうど良かったではないか……これで跡目の問題は解決できたのだから」
アリスの口は動かず、体の中から出てくる声。
「そんな、お戯れを……」
ラルフは爺でも意外に気が強くて、もうこのありえない状況に慣れてきたようだった。
「で、ミントを、ミントを救って欲しいのだ」
アリスの「体が言う」言葉に、爺とベルナールは顔を見合わせる。
つづく