不思議ちゃんの冒険25
「やめてっ!」
対暗黒物質線――ADRに全身を晒すミント。
まだ幼い腕にしっかりルシファーを抱きながら……。
「あーっ!!」
ミントの体がどんどん暗くなっていく。
(そうだ、アタシもうダメだからルシファーをこのまま逃がしてあげよう。ルシファー! 起きて)
苦しさをこらえながらミントが彼を起こそうとする。まだルシファーの体には異常がなかった。
「ねえ……起きて」
どんどん弱るミント。
「そっか、こうすれば……」
美少年ルシファーの顔を両手に抱いて、なんとか微笑むミント。そのまだ幼い唇が、そっと美少年の唇に重ねられる……初キス……。
そして……目覚めるルシファー。
「あ、きみか……」
顔を赤くする彼に、ミントがなにか言おうとするが、もう声にならない。
巨大霊獣のほうも、空にぽっかりできた闇になっていて、いないのと同じ状態だった。
「ごめん、ぼくのせいだ。ぼくもいっしょに闇になる」
ルシファーがそう言ったとき、ミントは既に闇化していた自分の中に、ルシファーを抱き入れた。
青い空にミント形にできた闇に、沈むルシファー。
でもその闇は、愛の温かさに満ちて、まるで胎内のように……
……
「ミントーっ!!」
すべてを目撃した戦士たち……。
ある者は、敵として……ある者は彼女を裏切った者として……。
あとには2振りの霊剣が……残った。
「戦士のみなさん、お疲れ様です。ここで試験を終了します」
無感情にアナウンスする声。
参加した戦士たちは、鉛のような気分でハネられた仲間たちのところに戻ってくる。
「……」
「……」
「おい! きみ」
会長が派遣を捕まえて、戦士たちにわざと聞こえるように言う。
「あの2本の霊剣、拾って来い! あれを武器商に高く売りつけて、金にしてやる。いや、アンティーク商でもいいwww」
ダルトンの目が、戦士の魂であるそれをぼーっと見ている。
回収される2振り……。
その上にまだそびえる巨大霊獣の形の暗黒――空間にできた結界の破れ……。
「ほーう。大人用と子供用の2本か。セットで売ったほうがいいかどうか……」
商工会長はもう商売のことを考えていた。
つづく