不思議ちゃんの冒険22
「うわーっ!!」
来場客の驚きと悲鳴。
次々に逃げ出す人々……。
彼らの顔が、ときどき霊獸のほうを振り返る。
巨大な体に、大人の霊剣を構える女の子が乗っていて……
――その瞬間、ミントの体がパッとクアドランに向いて、妖気のようなものを漂わせながら彼の腰の霊剣を抜き取る。
かばおうとして伸ばされた彼の手が止まって、ぶるぶる震え出す。……クアドランの目が、自分の鳩尾に刺さった霊剣を見る。……俺の霊剣……その柄を握ってる、まだ子供の手……(え、ありえないだろこんなのって)
スロー再生のような映像……現実……。
いきなり再生が戻ったように、倒れかかるクアドランを猛スピードで霊獸のツメが切り裂く。そして霊獸に駆け乗った女の子……それはクアドランの霊剣を握るミントだった――。
「ひでえーっ! ううっ!」
仲間のダルトンが悔しそうにわめく。
一斉に彼を引っ張ってダッシュする仲間たち。
辺りは和やかな空気から一転、パニックのただなかにあった。
「お、俺は信じない、信じないぞこんなの! うそだー!!」
半狂乱になってダルトンが暴れる。
しかたなく、逃げながら彼の四肢をそれぞれ掴む仲間たち。巨大霊獸の上から、別人のようなミントが人々を見下ろす。
「なんでそんなに怖がるの? 悲しくなるからやめてよ……。やめてよ!!」
ミントのうつろな目に涙が溢れてきた――
――ルシファー、アタシ悲しい。悲しいよ……。
つづく