不思議ちゃんの冒険20
それから数日後……
昼間の町を急ぐ一人の使者――アリスの実家に仕えるジイ(爺)、ラルフだった。
「急がにゃ急がにゃ……、おー、あれじゃ、あのマンションじゃ!」
昔は超イケメンだったのが今でも分かるラルフ。
アリスがドアフォンに出る。慌てた爺の顔……。久しぶりに見る。
「爺。どーしたの急に?」
「お父上が、大変でございまして」
「え……、いいから来て」
まもなく部屋に来る爺。
「アリスさま、た、大変でございます。メルカレードのお父上が失踪されました! ああどーしましょーアリスさま!」
挨拶もなしにいきなり話す爺。
部屋にいたベルナールが心配そうに顔を出す。
「おー! これはベルナールさま! あなたもよくご存知のセラフィム卿が悪霊にたぶらかされてとうとう出奔なされました!」
爺が、すがるようにベルナールの手を握る。
「そりゃ大変だ。でもちょっと掛けて落ち着いて……」
ソファーを指して座らせる。
アリスとベルナールは向かいに来る。
「ふぅーっ。あ、そうじゃった、挨拶がまだでしたな。……アリスさま、ベルナールさま、お元気なようでなによりです」
爺が交互に見て微笑む。
「で、失踪の件でございますが……アリスさまには直ちにお帰り頂いて、当主の代理を務めて頂かなくては……」
爺の目が迫る。
「わ、分かってる。私も覚悟はできてたから。それで、父の霊剣は……まさか」
爺は小さく頷いた。
「そのまさかでございまして……だから大変なのでございます。恐らく悪霊はお父上の霊剣の魂になって……おおー、考えるだけで身震いする!!」
爺の顔が青ざめる。
「でももっと心配なのは……父の守護精霊たち、じゃない?」
アリスの言葉に爺が固まる……「そ、そうでした。守護精霊たちも、もちろん悪霊と一緒で……そのうちの二人はアリスさまと、もう一人はミントさまと兼務でして――」
アリスが言葉を失う。
……
つづく