不思議ちゃんの冒険15
マンション4階のエレベーターホールに出る彼ら。
「部屋はどこなんだ。クアドラン」
アールが辺りを見回しながら訊く。
「驚くなよ……この階すべてさ」
アールが驚くよりも早く、仲間が一斉にため息をつく。
「マジで?」
「ああ」
「だって、何部屋だよここ……」
「ざっと16戸ってとこだろ。それも……ほら開けたから試しに1戸入って何部屋か確認して見ろよ」
いつのまにクアドランが鍵を開けている。(だが戦士階級の特権は、まだその程度のものではなかった……)
「へぇー。……4部屋ある。それにダイニング、キッチン……」
アリスも彼らに混じって中を見て回る。一つの部屋で20平方メートルぐらいはある。
「でもこの階全部空き部屋ってわけじゃないだろ?」
アールが興奮ぎみに言う。
「いや、全部空きだ。そっか……まだ知らないようだな。どんなタイプであれ、マンションの4階と9階は全部、戦士が自由に使えるようになってる。これは『死』と『苦』を連想するものを忌み嫌った平民が出した苦肉の策といったとこだな」
アリスは代々戦士階級の家柄だったが、集合住宅に住む必要がなかったため、そんなお得な情報など知る由もなかった。
「私は遠征のときも、ちゃんと金払ってホテルに泊まってたが……」
悔しそうなアリスにクアドランが冷笑する。
「それも方法としてはありだが……戦士が情報不足なのは致命的なのでは……」
つづく