不思議ちゃんの冒険12
「アリス、霊獸がそっちいったぞ」
アリスは目をキョロキョロさせます。
いきなり前に広がる草原。
一面空はくもり。
風が吹き付けていて……。
「アリス! 霊剣を! 早く出せ!」
アリスの記憶にあるこの世界……たしかずっと前、ここにいたような……。
「アリスーっ!」
声の主を確認することなく、自然に動く体。
アリスは地を蹴り、高く舞い上がる。
次の瞬間、姿を現した竜のような巨大霊獸を、アリスの右手からタイミングよく突き出した剣が捉えて、頸を突き通す。
吠え声を響かせてもがきながら、アリスを宙に放り出す霊獸。
「アリスーっ、お前の守護精霊を!」
宙に舞うアリスに届く声、スローで展開する光景。
(だいじょうぶ、心得てるから)
アリスの目が閉じられる。
「守護精霊よ、出でよ!」
いきなり光に包まれるアリス。そして自分より小さな女の子3人が、宙を舞う彼女の足にキスして支える。
「アリスさん、お久しぶりです。あなたの守護精霊のメンバー、リナとセナとマナです」
アリスは頷いて、守られいる光の中で精霊たちと話した。
「メルカレードの父の具合は?」
「かなりお悪いです。霊剣の継承を急がれていらっしゃいます」
「まだ錯覚とかあるのか、悪霊のせいで」
「はい、残念ながら。以前よりもますますお悪くなられて……」
「そうか……、私もここらが潮時なのかも知れない」
アリスは光に包まれたまま地上に下りたった。
彼女の視界に映るなつかしい仲間たちの顔……。
「アリス、召喚したかいがあった。異界からの無事帰還、おめでとう!」
それは古くからの戦士仲間、ベルナールだった。
「アリスお姉ちゃん、あたし剣の腕上がったんだよ! 見て見て、ほら」
少女が笑いかけて、自分の守護精霊に剣をふるってみせる。
「あぶねえな! ミント!
かわいい男の子の守護精霊が少女の剣を難なく避ける。
「あ、こらっ! 段どっといたのに無視したわねーっ!」
アリスが仲間たちと苦笑する。
追いかけっこする妹ミントと精霊の男の子……。
「あいかわらずね、ミントは」
アリスの目が楽しげに2人の姿を追っていた。
つづく