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今日も変装宦官様は後宮の宮女達に手を焼いている-休題-  作者: 雲花エマ
旭が連れて来る者達
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春鈴の熱心さ

 先日渡されたその巻物にはこう書かれていた。

『宦官紅運を見張れ。紅運が行く所全てを四六時中見張る為、宦官、武官必要なだけ集めろ――』

 それは容易だろう。どんな者でも良ければ。

 だが、この永庭宮に置いておくと言われれば話は別だ。

 武官の方は後宮には入って来れないから、信用出来そうなのを適当に選んでおけば良いが、宦官となればどの基準にすれば良いか悩む。

 ずっと『志遠様』として接して来た連中は果たして本当の事を知った時、どんな反応をするだろう。

「悩ましい」

「実にそうですね」

 九垓の言葉に答える者など今はいないはずなのに返って来た。

 声の方を見れば、自分より身長が低い彼女が真横に立っていた。

「どうして春鈴がここに居る?」

「少し気になったので」

 それでこの場所に来れるはずがない。

 ここは後宮内ではあるが、宮女が来るような所ではない。

 あの巻物により人が多く集まり、自分によって選ばれる場所だ。

「この草がぼうぼうと生えている所で何をなさるんです?」

「それは……」

 絶好な人員選抜の会場――だと言って良いのだろうか。

「大丈夫ですよ、今日は大事な日だってことは分かっております」

「ほう、どのように大事な日だと?」

の人の為、でしょう?」

「彼の人とは?」

「紅運さんです」

 何ともなしに春鈴は言った。

 こいつ、全部知ってて来たか? ここに――。

「その顔、私が何も知らないで……と思っていたのですね。ちゃんと志遠様には言っていません。だから安心なさって下さい」

 それでは逆でダメなんだ。と九垓は思ったが、時は確かに進んでおり、その選ぶ時間になって来たようで人が来出した。

 この人目に付きにくい永庭宮近くの草がぼうぼうと生えている区間、そこで行われるものを見て面白いものか。

「本日、お前は選ばれないだろう」

「分かっておりますよ。でも、私もここにこれから集まる人達のように己の為、志遠様の為にお役に立ちたいのです! それにあの宮の事を知っているのは私も同じです。九垓さんよりも私はあそこに居ますから」

「な!」

 何だと? と言って怒るのも人目があって出来やしない。

 これはまた、先日志遠様がおっしゃっていた通り、波妃様よりも今は志遠様だ! というのが伝わって来るかのような春鈴の熱心さ。

「お前、他に何か考えがあるのか?」

「いいえ、美味しい物をくれそうな人がいるかどうかでも、そんな人が良い! でも決してありません!」

 何となく、それは春鈴の条件に入っていそうな気がして来た。

「帰れ。オレが選ぶ。間違っても知られないようにする。それが出来なければあの方のお近くになど居られるはずがないだろう?」

「それはそうなのですが、私もちゃんと一緒に見たいのです!」

「何故?」

 どうしてそこまでそう言うのか気になって来た。

「志遠様はお前がここに来ていると知らないんだろう?」

「ええ、知りませんよ。知っていたら、ご自分も来られたのではないですか?」

「それは困る」

 そんな事をさらっと言ってもちっとも反省していない。

 そもそも何で春鈴はこんなに熱心になる? 美味しい物をくれそうな人など探してもきっと宦官では志遠様ぐらいだろうに……。

「まさか、お前が志遠様の探されている方ではあるまいな?!」

「え? だとしたらどうするのです? 居ても良いと言ってくれるのですか?」

 何だ? この開き直りな感じの口調は――。

「お前が志遠様の? マジかよ?!」

「じゃあ、時刻ですので始めてください」

「とってもあり得ない!!」

 飲み込めないままでいれば、人が大勢集まっている。

 晴れの日に、こんな事に思い当たるなんて――目を瞑りたい。

 そんな九垓にか春鈴はぽつりと言った。

「私は絶対にもう二度とあの方が困るような事をしたくないのです」

 だったら早く文字を覚え、使えるようにしろ! と言いたいが、春鈴が言う所のそれはそう言った話ではなく、未来を見据えての事だろう。いや、過去か……。

 そうだとするなら、もう紅運は関係なく、志遠様がお考えになっている事より先の事を考えて春鈴が行動しているとしたら――。

 あの方の情報はそんなに手にしていないが、もし本当にこの春鈴がその方だったら、何を求める?

「私はあなたが望むものを連れて行けるでしょうかね?」

 春鈴に言うわけでもなく、志遠様として永庭宮で待つ永華様に向かって九垓は言った。

「連れて来てもらわなくては困るのです、私が。いえ、あの方が……」

 それはまるでその時の事も含めて言っているようで、この時間がこの先の夢のように大切な時間だと春鈴の言葉は教えてくれようとしていた。

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