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付いて来た者と一緒に

 では、私は忙しいので紅運に案内させましょう。一度行ったことがあるので大丈夫でしょう。と言う旭に志遠は頷くことをしなかった。

「あまり人に知られたくない。旭が案内してくれないか?」

「でも……」

 旭が渋るのはよく分かる。

 だが、それ以上にこれは他の誰にも知られたくなかった。

 兄上にもまだ話してない。

「旭は知っているだろう? 俺を使って……」

「分かりましたよ!」

 この揺さぶりはきっと今の旭だから効いているのだろう。

 その日の午後には構堂の家に行くことになった志遠は永庭宮に一度戻り、仕事をしたり、支度をしていると、ひょっこり顔を出して来たのは春鈴だった。

「どうしたのだ? こんな時間に」

「私も連れて行って下さい!」

 開口一番飛び出して来た言葉に志遠は驚いた。

「何故だ?」

「美味しいお菓子が出そうな臭いがするからです!」

 とても堂々とそう言った。

「ダメだ」

「何故です?」

「遊びに行くんじゃない。それに外に行くんだぞ?」

「知っています。聞きましたよ、その辺で」

 それは嘘か誠か? 分からない理由だった。

「春鈴、お前は残れ。文字の方だってあるだろう?」

「あれより、こちらの方が良いのです! だって、先帝に仕えていた元宦官なのでしょう? その方は!」

「どこから聞いた?」

「いえ、聞こえて来たのです。ふらふら歩いていたら」

「お前は健康の為に散歩でもしてるのか?」

「いいえ! 食べ物の為ですよ! それにどこに何があるのか分かりません! 旭様と二人で行くのでしょう?」

「そうだが?」

「私も連れて行って下さい! 役立てますよ?」

 何にだ? と聞こうとした。

 まさか、こいつ、その時出される菓子でも食って、毒味を? ――そこまでせずともこちらはそんなのに手を付けない。

「ダメだ。下がれ!」

「嫌です! きっと志遠様はお聞きに行くのでしょう? 今、お心を占めているのはきっと私が話した事も含まれている!」

 それは正しかった。

「だがしかし、旭に何と言えば良いのか……」

「簡単です! 付いて来てしまった……と言えば良いのです!」

 本気か? と思った。

「それで行けると?」

「はい、思っています!」

 堂々過ぎて強引だ……。

 そこまで菓子を? いや、春鈴の話をそのまま旭にした方が早いくらいだ。

「お前は分かっているのか? 私が知りたいのはお前が語らない事かもしれないし、語れない事かもしれないんだぞ?」

「でも、私も聞いてしまいましたから! もう同じようなものではないですか!」

 根負けした……と言って、連れて行って良いのか迷う。

 構堂に春鈴の顔を見せて何になるだが、圭璋だと分かる前に見せた時のような突拍子もない事をされても困る。

「ダメだ」

 志遠は宦官として正しい選択をした。

 けれど――。

「……どうするんです?」

「しょうがないだろ! 勝手に付いて来たんだ!」

 志遠が怒るのも無理はなかった。

 散々言って聞かせたのに、こそこそと背後から春鈴が付いて来ている。

 そういえば、あの時、すでに春鈴は外に出る為の服を着ていた。

 こういう時だけ行動が早いというか――。

「はぁ……」

 志遠は深い溜息を吐いた。

 何度目だろう、こういう春鈴のせいでこうなるのは――。

「分かった、春鈴。もうじき外に出る。私が許そう」

「本当ですか!?」

 やったー!! と今にも大喜びしそうだが、案内することになった旭も呆れ果てている。

「お菓子はたぶん出ないぞ?」

「え?」

「あの方はそういう気遣いをしますかね?」

「さあな……」

 こんな話を聞かされれば、そこ狙いの春鈴だって行くのやめます! となるだろうと旭と合わせて話せば。

「まあ、良いのです。もし、出なくても何かもらえるかも!」

「いや、だから……」

「私は心配も兼ねて行くのです。それを知っているのは私もなのですから」

 そういう事を言ってくれるな……と志遠は泣きたい気持ちになった。

 確かにそれに気付かせたのは春鈴だが、こいつの頭の中は今どうなっているんだ。

「そこに食べ物以外はあるか?」

「いいえ、ありません」

 じゃあ、何をもらおうとしてるんだ? 春鈴は――。

「さあ、行きましょう! 約束の時間に遅れるのでは?」

 そう言われなくても行くが……春鈴はどうしてそんなに明るく元気なのだろう。

 まさか、嫌な文字の練習をしなくて良くなった! と喜んでいるのだろうか、内心は……。

 やっぱり連れて行くべきでなかったと後悔し始めた頃、一行は構堂の家に着いた。

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