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7 第一歩

「え!? もしかしてなにか知っているんですか?」

「図星のようね。月影げつかげを倒し、音楽で一世を風靡した、石井太陽さんでしょ? 私が結婚する前に一緒に演奏したことがあるんだ。私がまだ10代だったかな」

「月影? 月影ってなんですか?」

「太陽さんの息子なのに何も知らないの? でももう大分前のことだしねえ。あえて言わないのかなぁ? 月影っていうのは月のエネルギーで育った肉食の怪物よ。日本に振ってきたことがあった。約42年前に地球上の月影は絶滅したと言われているわ」

「父が今どこにいるのか、わかりますか?」

「カジノで大コケして、奥さんの言いなりになっているという噂なんだけど」


 小春は悲しみに暮れる顔をする。

 優陽は次の言葉を早く聞きたかった。


「ということはもしかして家にいるんですか? どうなんですか?」

「それはわからないけど、美優さんがなにか知っているかも知れないわ」

「母は知らないって言ってて」

「そうだ、妹の桜歌ちゃんに聞いてみたらどう?」

「でも、父の妹は結婚しているし、連絡先もわからないし」

「桜歌ちゃん、確かリコヨーテの兵士になっていたはず。電話番号聞くから、ちょっとここで待ってて」


 小春は缶コーヒーを飲み干して、ゴミ箱に放ると、クリニックの外に小走りで出ていった。


「なんだか忙しい人だ」


 優陽は缶コーヒーを少しずつ飲んだ。

 小春が帰ってくると同時刻、缶コーヒーを飲み終えた。


「はい、電話番号。上のは石橋桜歌ちゃん、下のは私、青井小春よ」

「ありがとうございます。でも、なんでこんなに親切に?」

「太陽さんに似てるから。私、昔、太陽さんのことが好きだったんだ」

「え? そうなんですか?」

「まあそのことは置いといて。何か進展があったら教えてくれる?」

「あ、はい、そろそろ給食の時間です。戻りましょう」


 ドン!


「ああ、ごめんなさい」


 優陽は清掃員にぶつかった。

 ?

 太った清掃員はぶつかったときは微動だにしなかった。何も言わずにクロスを持って、手すりを拭きながら2階への階段をあがっていった。

 優陽と小春も2階へ行き、清掃員とすれ違った。


「何だあの人、ぶつかったのに気が付かなかったのか?」

「まあまあ、給食の列に並ぼう」


 今日のお昼ご飯はつけ麺と野菜サラダとバナナだった。

 セルフでとりに行くのだった。

「「「いただきます」」」


 優陽は手を合わせる。

 やっと昼飯にありつけた。

 喉越しのいい麺と美味しいスープのお陰で、口へ運ぶ手が止まらなかった。


「ご馳走様でした」


 まれに見る、早食いでスタッフを驚かせた。

 食器類は調理員が洗うため、箱の中に入れた。


「美味しかった?」


 新しく会ったスタッフに声をかけられた。黒髪をお団子にしている。化粧はしていない、40代くらいの女性だ。


「はい。あ、あの、僕は石井と言います、お名前聞いてもいいですか?」

佐藤理恵(さとうりえ)です。気軽に呼んでね」

「はい」


 優陽が返事をすると、どこかに行ってしまった。

 午後の活動になるまで奥のソファで待つことにした。

 少しの時間がたった頃、「カラオケ大会します」と呼びかけで皆が集まった。

 カラオケで皆が本気で歌っているのを聞く。

 全員が終わると用紙に記入した。そして、集計の結果、各部門に賞状が手渡される。審査員賞と参加賞のお菓子が全員に配られた。


「それでは帰りのミーティングを始めます。司会をしてくれる方?」


 場内がしーんとして、誰も手を挙げなかった。


「はい」


 武は空気を読むかのごとく、手を上げた。


「皆さん、お疲れ様でした。今日のプログラムは、午前は散歩、書道。午後はカラオケ大会でした。吉田さんから感想をお願いします」

「特にありません」

「長口さん」

「ゆっくりできました」

「竹山さん」

「カラオケ大会が良かったです」


 そして最後の優陽の番はきた。


「散歩が楽しかったです」

「はい、自分もカラオケ大会が楽しかったです。以上です」


 武はそう締めくくった。

「自立支援の料金払う人は前に来てください。それでは、お疲れ様でした、気をつけて帰ってください」


 理恵が言うと、皆は解散した。


「石井さん、駅まで行くの?」


 尚人が声をかけてきた。


「うん」

「一緒に帰ろう?」

「うん」

「何歳だっけ?」

「41歳」

「意外と年いってたんだ。俺は40」

「若く見えるってことかな?」

「そうだね」


 2人は料金を支払うと階段を降りに行く。


「長口さんはどのへんに住んでるの?」


 優陽は仲良くしてくれる人ができて、つい饒舌になる。


「上りの電車に乗って、30分くらい揺られたところだね。駅からは近いけど」

「車の免許ないの?」

「危ないから運転しちゃだめだって。つーか、教習所に行くお金もないし」

「障害者年金は?」

「2級もらってる、2ヶ月に13万くらいかな」

「僕も3級なんだけど、これからもらう予定」

「あー2ヶ月9万くらいかな?」

「そんなにくれるんだ」

「早く申請したほうが良いよ」

「わかった」

「石っちさ、ハイスタ好きなの? ステイゴールド聞いてたよね。俺も好きなんだ」

「え、長口さんも好きなの?」


 2人は語り合いながら、駅までつく。

 上りの電車に乗る尚人と、下りの電車に乗る優陽はそこで別れた。

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