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最強の諜報員ですが、コミュ障改善のために魔法学園へ強制入学させられました〜一応任務の一環です〜  作者: 終夜翔也
1章 入学編

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第25話 圧勝

 繰り広げられる剣戟。その戦況に変化が生じる。

 ジルの剣に短剣の刃を叩きつけた瞬間、その剣身が鞭のようにしなりジェイミーへ伸びてきたのだ。

 金は紙や糸に加工出来るほどの展延性を持つ。その特性を利用したのだと躱しながら理解した。

 そこへ剣の錬成に使用されなかった砂金が襲い来るがそれすらも回避して見せる。


 「チッ」とジルが舌を打つ。

 傍から見ればジルがジェイミーを圧倒しているように見えるかもしれないが、ジルはまるで手応えを感じれていなかった。

 開幕から一気呵成に攻め続けているにも関わらず一撃も攻撃を当てられていないだけでなく、その糸口すら作れていない。

 剣を交える同級生の男は防戦一方に徹しているにも関わらず、切羽詰まった様子などなくまるで子どもの相手でもするように攻撃をいなし続けている。

 得たいが知れない以上に気に入らない。

 そんな感情がジルの胸の内に染み出てくる。


 (こうなれば更に攻撃の手数を増やして――)


 そんな思考の隙を突くように、ジルの腹部を衝撃が襲った。


 「ガ――――ッ⁉︎」


 何をされた?

 同時に離れ行く自分と相手の距離と突き出された長い足を見て初めて蹴り飛ばされたのだと理解した。

 不味いと焦燥感を抱く。体勢を崩されたこの状況は相手からすれば恰好の的だ。

 地面に叩きつけられると同時に受け身を取り、衝撃を受け流すと同時に素早く立ち上がる。そして迎え撃つ構えを取るが――、


 「なっ――」


 ジルは呆気にとられてしまう。

 ジェイミーが追撃を加えようとせずその場から一歩も動いていなかったからだ。


 「――どういうことだ?」

 

 「何が?」


 「今のは私を倒す絶好の機だったはずだ。なぜそれを見逃した?」


 「いつでも倒せる相手に慌てる必要がないだけだ。君は気にしなくていい」


 その挑発とも取れる科白に頭に血が昇るのを感じた。

 すぐその言葉を後悔させてやると床を力強く踏み締め疾走する。


 「〈閃け〉」


 そこへ《雷光(ライトニング)》が放たれるが、こんなもの障害に成り得ない。

 前方に金の障壁を展開し、その一撃を防がんとするも――、


 「⁉︎」


 まるで障壁を避けるように電撃の軌道が曲がり、ジルへ直撃したのだ。


 「――ッ〜〜〜〜!」


 全身を駆け巡る痺れに体の自由が奪われ、盛大に横転してしまう。

 明らかに第二階位魔法の殺傷力ではない。使い手の技量によって威力が向上している。だがそれ以上に――、


 「どうして攻撃が当たった? そう言いたげだな」


 ジルの頭の中を見透かしたようにジェイミーが口にした。


 「電荷を知っているか? あらゆる電磁気現象を起こす元となる物理量のことだ。電荷には量によって正電荷、負電荷に区分されるのだが、この双方には引き寄せ合う性質がある。そしてきみには先程の接近戦の時に第二階位魔法電位系魔術《帯電エレクトリフィケーション》で負電荷を付与しておいた。ここまで言えば分かるだろう?」


 正電荷の攻撃を放てばそれは負電荷を帯びたジルに引き寄せられ、百パーセント命中する。

 それが防御したにも関わらずジルが攻撃を浴びせられたカラクリだった。


 「〈走れ〉、〈稲光よ〉」


 「これで終わりだ」とばかりに紡がれたのは第三階位魔法電撃系魔術《三連雷光(トライ・ライトニング)》。三匹の(いかずち)の蛇が一斉にジルへ襲いかかる。

 

 「――ぐうう......っ! まだだあっ!」


 ひれ伏すような体勢で倒れていたジルを砂金がドーム状に囲む。

 当たる余地をなくしてしまえば百発百中の攻撃だろうが関係ない。三匹の雷蛇は行手を阻まれ霧散した。

 どうにか危機は凌いだ。しばらくこうして体力の回復に努めて――


 「おしまいだよ」


 そんな声が聞こえた刹那、金の防壁を破り横殴りの蹴りがジルの脇腹に刺さった。

 同時にドームが崩壊し、吹き飛んだジルが白い壁に叩きつけられる。

 そのまま床に倒れた彼女が立ち上がってくることはなかった。


 「嘘......」


 二人の戦闘を観戦していたレアが絶句したようにこぼした。

 間違ってもジルは弱くない。少なくとも同年代の中では上位に位置する実力者だ。

 それをこんなにも簡単にねじ伏せてしまうなんて......彼は一体何者なのだろうか。

 そんなレアの心情を知ってか知らずか、ジェイミーはそそくさと部屋から出てくると目の前へやってきた。


 「失礼ですが、皇女殿下のこの後のご予定は宮殿へ帰られるだけでしょうか?」


 「ええ......そうだけれど......」


 「では失礼致します」


 それだけ聞くとジェイミーは一礼し、背を向け歩き始める。


 「待っ......」


 呼び止めようとするもその孤独な背中が詮索は許さないと告げているように感じられ躊躇してしまう。

 ジェイミーはそれに気づき一瞬足を止めるも、レアに言葉を続ける気配がないことを感じ取り去っていった。


 「あ......ジルは⁉︎」


 今まで失念していたジルのことを思い出し、先に部屋に入って介抱をしていたフェリックスのもとへ駆けつける。


 「大丈夫っすよ。ちょっと怪我してるだけで護衛に支障が出るほどじゃないです」


 「良かった……」


 ホッと安堵の息を吐くレア。

 フェリックスがジルの身体を抱きかかえ、部屋を出ようとしたところであることに気が付いた。


 「あれ? レイチェルさんってどうしたんですか?」


 「レイチェルさんならそこに――あれ?」


 先程まで隣にいたはずのレイチェルの姿がどこにも見当たらなかったのだ。

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