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夏のホラー2023『帰り道』

神社の帰り道

作者: 佐藤そら

 それは、いわゆる厄年と言われる、数えの42歳、本厄の年のことだった。

 体の不調が続き、僕はよく寝込んでいた。


 知り合いに紹介されたお寺へ行くと、健康になれるよう、力をもらえるよう、氏神様をお参りすると良いと言われた。

 そういえば、神社をお参りすることもそんなになかったな…なんて思いつつ、僕は自宅から5分ほどの距離にある神社に参拝するようになった。


 その神社には、守り神に鹿が祀られており、奈良にある神社の分院だった。

 神社を参拝するようになり、僕の体は少しずつ動くようになり、次第に回復に向かった。


 そんなある日。

 空も明るい真昼間、自営業をしていた僕は、仕事の昼休み、力を頂きに行こうと、いつものように神社へと向かった。

 手を合わせて、神社をあとにする。

 ここまでは、いつもとなんら変わりのない日常だった。

 そう、ここまでは…。



 参拝を終えた僕は、家路についた。

 信号を渡ったところで、ふと背中に異常な気配を感じた。

 何か、今振り返ってはまずい。そんな気がした。

 心臓の鼓動が、知らぬ間に速くなっていく…

 僕は、意を決して振り返った。


「う、嘘だろ!?」


 そこには、道幅いっぱいの大きさの巨大な蜘蛛が、猛烈な勢いで、神社からこちらへと向かって来ていたのだ。


「バケモノだぁああ!!」


 僕は慌てて走り出した。

 もし追いつかれたら?

 あの鋭い牙のようなもので捕まえられたら?

 僕はどうなる!?

 考える余地もなく、僕はひたすらに走った。


 蜘蛛のバケモノは、間違いなく僕に向かって走って来ていた。

 お昼時だったのもあり、周囲に人の気配はなく、そこには必死に逃げる僕だけがいた。


 次の角を左に曲がって…!


 その次の角を右に曲がって…!


 もう少しだ!

 角を曲がれば…家が、僕の家が見える!

 足を止めることは許されない!!

 急げ、急がなければ蜘蛛に追いつかれる!!


 後ろを確認する余裕はなかったが、蜘蛛が追ってくるのを僕は全身で感じていた。


 息を切らし、必死の思いで僕は家へと走り続ける。


 バタン!!

 玄関の扉を勢いよく閉め、僕はそのまま倒れ込んだ。


「どうしたの、あんた、そんな青ざめた顔して??」


「蜘蛛…巨大な蜘蛛に、今そこの神社から追いかけられて…!!」


「巨大な蜘蛛!?」


 妻がきょとんとした表情で、こちらを見ている。

 僕は乱れる息を整えながら、汗をぬぐった。


 おそらくあれは、神社を参拝し、僕の体に取り憑いていたものが祓われ、再び取り憑こうと追いかけてきたものだったのだろう。


 もし、あの帰り道、巨大な蜘蛛に追いつかれていたとしたら…

 僕は、生きて帰って来られなかったかもしれない……

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― 新着の感想 ―
[良い点] お祖父様の実話と思うと本当に怖いです。 お祖父様が無事で良かったです。
[良い点] ∀・)シンプルに読めばパニックホラーというものに見えつつも読みこむ程に文学的ホラーになっている仕様が僕には感じられました。それこそ怪談というものになるのかもしれない。実話がベースとのことで…
[良い点] 祓われたのに再び取り憑こうとする執念が怖いですね。 逃げ切れてよかったです。
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