90 ダンジョンコアの力
魔族にしてかつての魔王の側近、魔将軍フェルムンドが魔力を高め、戦闘態勢に入った。
なんで迷宮の最奥にいるのか、色々気になることはあるけど、ここで倒してしまえば関係ないかな。
「フォース·マリオネット!!!」
魔将軍が両手を前に出し、魔力を巡らした細い糸を無数に放ってきた。
さっそく厄介なのを使ってきたね。
「アル君、その糸に絡められると身体の自由を奪われて、アイツの操り人形にされちゃうから気を付けてね」
「なるほど、この奇妙な魔力はそういう効果があるのですか」
私はアル君に忠告しながら、糸を回避する。
アル君も上手く避け、そのままの勢いで魔将軍に斬りかかった。
「くっ、人間にしてはなかなか······。だが、その程度で我を倒せると思うな!」
右腕を少し斬られて魔将軍が後ろに下がった。
もう一歩遅ければ、両腕を切断されていただろうにかなりの反射神経だね。
アル君はさらに攻撃を続けるけど、ギリギリのところで回避されている。
「なるほど、確かに並の相手とは違うようですね」
「ま、昔勇者も私も手を焼いた相手たからね」
追撃を止め、アル君が相手の出方を伺う。
さすがに一筋縄ではいかない相手だ。
でも今の動きを見た限りでは、魔将軍は当時に比べて劇的にパワーアップしているわけでもないみたいだね。
「勇者に匹敵する人間がまだいたとはな。ならば、先に見習い魔術士の方から始末してくれる!」
魔将軍はアル君を難敵と判断したようで、攻撃の矛先を私に向けてきた。
私の方がアル君よりも弱いと思ったのかな?
何度も言うように、当時の私ではないのだよ。
「そ〜れ、アースバインド!!」
「な、なんだとぉっ!?」
魔将軍の足元が盛り上がり、纏わりついた「土」が全身を締め付けた。
魔将軍は私のことを舐め腐っていたようで、ちょっと強力な「土」魔法で簡単に拘束出来た。
「ば、馬鹿な······見習い魔術士ごときが、こんな強力な魔法を使えるはず······!?」
だーかーらー、見習いだったのは何百年も前の話だよ。まだ理解してないのかね?
それなら、もう当時の私ではないことを見せつけてあげようじゃないか。
「それじゃあ、魔将軍様ならこれくらいの魔法、耐えられるよね?」
私は右手に少し強めに魔力を込めて、熱を圧縮した火球を作り出した。
ただの下級魔法のファイアボールじゃないよ?
私やアル君を巻き込まないように調整してはいるけど、少し触れただけで大爆発を起こす危険な代物さね。
「な、なんだ······その尋常ではない魔力は!? 貴様、本当にあの見習い魔術士なのか······!?」
「そ〜れ、喰らいなさいなっ」
話の通じない魔将軍の言葉を無視して、私は火球を放った。
火球はそのまま真っすぐに飛んでいき、魔将軍の身体に命中する。
――――――――――!!!!!
拘束されていた魔将軍は為す術もなく、火球の大爆発に呑まれた。
断末魔すらあげることなく、魔将軍は私の「土」の拘束ごと跡形もなく吹き飛んでいた。
当時は勇者や仲間達と共に戦い、それでも苦戦した相手だったけど呆気ないものだね。
まあ、それだけ私が成長したってことさね。
しかし気になるのは、あれから何百年も経って私がこれだけ成長したのに対して魔将軍の方は当時とほとんど変わらない強さだった。
もともと潜在能力の高い魔族が何百年も力を蓄えたら、相当にレベルアップしそうなものだけど。
実際、魔王も一度倒しそこねて再度対峙した時は桁外れに強くなっていたし。
ま、それは今考えたって仕方無いか。
それよりも魔将軍は倒したんだから、後はあのダンジョンコアを回収して······。
――――――――――!!!!!
そう思って目を向けると、ダンジョンコアが眩い光りを放った。
すると床に召喚陣が現れ、何者かが召喚された。
「人間め······。我の存在を突き止め、またしても邪魔立てするつもりか!」
現れたのは、先ほどとまったく同じ口上を述べた魔将軍フェルムンドだった。
おやや?
これは一体どういうことかな?




