9 特訓開始
「さ〜て、まずはサーリィちゃんの魔法の腕を見せてもらおうかね。得意な属性魔法であの的を攻撃してみて」
私とサーリィちゃんの二人で町を出て近くの平原に来ていた。
ここなら近くに魔物の気配はないし、人もいないから思う存分魔法の特訓ができるってもんよ。
さっそく私は「土」属性魔法で魔法練習用の的を作り出した。
地面に魔力を送り込んで作った人型の土人形だよ。土で出来てるとはいえ私の魔力で強化してるから鋼鉄並に頑丈なものだ。
これを破壊できたら一人前の証だね。
「そ、それじゃあ火魔法で······ファイアボール!」
火魔法は基本属性でほぼ全ての魔術士が使用可能な属性魔法だね。
その分、使い手によって威力が全然違ってくるから魔法の腕を見るにはうってつけでもある。
サーリィちゃんが両手を前に出すと炎を纏った球体が的に向かって放たれた。
残念ながら的は破壊できなかったけど悪くない腕じゃないか。
「さ、続けて続けて。的が壊れるまで撃ち続けるんだよ」
「は、はい······!」
それから何度も火魔法を撃ち続けさせてみた。
そして何十発か撃ったところでサーリィちゃんが膝をついた。
魔力を限界まで消耗したようだね。
「うんうん、それだけ連続で魔法を撃てるなんて、なかなかの魔力量じゃないか」
「はぁ······はぁ······で、でも的は傷一つついてないですよ······」
息を切らしながらサーリィちゃんが言う。
私が作った土人形は多少焦げているものの、まったくの無傷だった。
まあ、かなり頑丈に作ったからね。
私の弟子達でも壊すのに苦労するはずだよ。
「サーリィちゃんは中級、上級魔法は使えるかい?」
「火と風属性なら中級魔法まで使えます。他の属性は下級魔法までで、上級魔法はさすがに無理です」
魔法の威力には大雑把に分けて5段階ある。
(最下級)
これは戦闘用じゃない生活魔法と呼ばれるものだね。小さな火を着けたり、飲み水を出したりといった簡単な魔法だ。
(下級)
さっきサーリィちゃんが使っていたような攻撃魔法のことだ。威力は低めだけど詠唱を必要としないから使い勝手がいいんだよね。
(中級)
下級よりも威力の高い魔法のことだ。魔力を練るために短めの詠唱が必要になるため、ある程度実力者が使う魔法だ。
(上級)
中級よりもさらに威力が高い魔法だよ。ただ詠唱が長く、威力の調整が難しいため使い手は少ないね。
(最上級)
上級よりもさらに上の最強クラスの魔法のことだ。下手をすれば町一つ滅ぼしてしまいかねない威力がある。消費魔力が莫大で扱いも難しいから使い手はほぼいないけどね。
なるほど、サーリィちゃんは中級魔法も使えるんだね。やっぱり魔術士として優秀じゃないか。
「それじゃあ次は中級魔法で的に攻撃してみようか。遠慮はいらないよ」
「も、もう魔力が残ってないので······これ以上は」
「大丈夫大丈夫、私の魔力を分けてあげるから」
私はサーリィちゃんに自身の魔力を分け与えた。魔力譲渡という結構難しい技術だけど私なら完璧に魔力を相手に渡すことが出来るのだ!
さて、これでサーリィちゃんの魔力は完全回復したね。
「え······魔力が? こんなに一気に魔力を分けてティアさんは大丈夫なんですか!?」
「まだ全然余裕だから心配いらないよ」
私の秘めてる魔力をバカにしちゃいけないよ。
並の魔術士くらいならいくらでも満タンにできるくらい余裕があるからね。
さあさあ、特訓は始まったばかりだからね。
せめてあの的にヒビを入れられるくらいにはなってもらわないとね。