87 ダンジョンコア
(アルディラーズside)
お師匠様の重力魔法により、巨大多脚ゴーレムが完全に沈黙した。
今の私に倒せない相手ではないが、昔、ルードとあれだけ苦労して倒したゴーレムを一瞬で······。
やはり、まだまだ私の力はお師匠様には追いついていないようだ。
多脚ゴーレムは沈黙し、新たな敵が現れる様子もない。もう少し進めば、いよいよ迷宮の最奥だ。
「さ〜て、このままちゃちゃっと攻略してしまうかね」
「あれだけの大魔法を使った後ですが、休憩はしなくていいのですか?」
「まだまだ余裕さね。私の魔力がこの程度で枯渇するとでも?」
強がりでもなく、本当に余裕がある笑みだ。
確かに、お師匠様が魔力切れを起こしたところなど見たことない。
どんな状況だろうと余裕を崩さず、笑いながら乗り切るところを見てきたからな。
だからこそ、未だに信じられない。
こんな元気な姿を見せているお師匠様の命が、あと1年足らずだということが。
不老不死の秘密が、まさか魔王の〝呪い〟によるものだったとは。
何故魔王がそんな〝呪い〟をお師匠様にかけたのかは、当時を知らない私には知る由もない。
魔王の〝呪い〟の力は絶大であり、お師匠様であっても抗うことは出来ないという話だが、本当にそうなのだろうか?
お師匠様なら〝呪い〟の力すらも制御し、どうにかすることも可能だと思うのだが。
そうであった場合、お師匠様は自ら生き延びる術を放棄しているということになる。
もし、そう考えているのなら私は············。
「何ぼ〜っとしているんだい、アル君? もう迷宮の最奥にたどり着くよ」
お師匠様に声をかけられ、私は思考を中断した。
今は迷宮という未知なる場所を探索中だった。
お師匠様がいるとはいえ、強力な魔物が徘徊する場で思考に耽けていては駄目だな。
今は迷宮攻略に集中することにしよう。
お師匠様の言う通り、もう迷宮の道も終わりに近付いていた。
「あの先が最後のフロアみたいだね。準備はいいかい、アル君?」
「ええ、いつでもいけます」
魔力も体力もまだまだ余裕がある。
お師匠様の訓練でいつも死ぬ思いをしていたため、寧ろ楽すぎる道のりだったとも言える。
おそらくは、この先に迷宮最後の魔物が現れるだろうが、すでに覚悟は出来ている。
そうして迷宮最後のフロアへと足を踏み入れた。
魔物の気配はなく、広大な部屋の中央に赤く輝く石が浮かんでいる。
あの石はなんだ?
「もしや、あれは〝ダンジョンコア〟かな?」
「〝ダンジョンコア〟というと、つまりは迷宮の核となる物ですか?」
「そうだね。昔、勇者と旅をしていた時に何度か迷宮を攻略したからね。まず間違いないと思うよ」
〝ダンジョンコア〟という存在は聞いたことがあるが、実際に見たのは初めてだ。
以前、別の迷宮を攻略した時には〝ダンジョンコア〟を確認することは出来なかったのだが。
「でも妙だね。〝ダンジョンコア〟は特殊な条件で迷宮を攻略した時のみ出現するレアアイテムだ。迷宮の最奥とはいえ、こんな堂々と剥き出しになってるなんて初めてだ」
どうやらお師匠様にとっても異常な事態らしい。
どうするべきか思案している。
「ま、誕生したての迷宮だからそんなこともあるのかな? とりあえずは回収するとしますかね」
お師匠様はそう判断し、〝ダンジョンコア〟に手を伸ばそうと動いたところで異変が起きた。
目の前に召喚陣が現れ、何者かが現れたのだ。
迷宮最後の魔物のお出ましか!?




