8 弟子入り志願者現る
「ティアちゃん、こっちも頼むぜ」
「かなり手強い魔物にやられちまってな······」
重傷を負った冒険者が私の前に運び込まれてくる。鋭利な爪で引き裂かれたと思われる生々しい傷口から、おびただしい量の血が流れている。
命の危険もありえる状態だ。
「これくらい私に任せなさい! そ〜れ、治癒!」
けど私にかかればあっという間に全快よ。
私の治癒魔法によって冒険者の傷は治っていった。死んでさえいなければ私に治せない傷はないよ。
たとえ強力な呪術を受けていたって問題なく癒せるのよさ!
冒険者登録をしてから早、数日。
私は基本的に治癒術士として活躍していた。
冒険者は危険な討伐依頼なんかも多いから、こうして怪我人が後を絶たないので私は大活躍中なわけさ。
どんな怪我だろうと格安お値段で治してあげてるから大繁盛だよ。
「あ、あの······ティアさん、少しいいですか?」
そう私に声をかけてきたのは先日魔物から助けた冒険者パーティーの一人、サーリィちゃんだ。
シャクト君やレッグ君、タミアちゃんの姿はなく、今日は一人みたいだね。
「おやおや、そんなかしこまっちゃってどうしたんだい?」
何か緊張している様子だったから私はフレンドリーに応えた。
「ティアさん、わたしに魔法の指導をお願いできませんか? わたし、ティアさんみたいに色々な魔法を使えるようになりたいんです······!」
ほう? それはつまり私に弟子入りしたいと?
この世界一の魔女、ネイティアース様に。
「あっはっはっ! いいだろういいだろう。この天才魔術士ティア様が君を世界最高の魔術士に鍛え上げようじゃないか」
弟子を取るのは初めてじゃない。
この500年の間に数え切れないくらいの弟子達を鍛え上げたものさ。
もっとも、最近鍛え上げた弟子は王族が厳選した元々素質が高かった人物ばかりだったけどね。
一般人と呼べる立場の弟子はずいぶん久しぶりだよ。
「そ、そこまでは······。それにわたしが世界最高の魔術士になんてなれるはず······」
「何言ってんだい。やるからには望みは高く大胆に! 目標は高いほど良いってものさ」
どうもサーリィちゃんは自信なさげな様子が目立つね。まあ、それが私に弟子入りを志願してきた理由みたいだけど。
ここぞと言う時に足がすくんでしまったりでシャクト君達に迷惑をかけたことが何度もあるとか。
それに攻撃魔法の腕も一つ年下のタミアちゃんに劣るらしく、この先冒険者としてやっていくのが不安らしい。
けど、ブレードボアを相手にしていた時の魔法の腕や立ち回りを見る限り、悪くないと思ったけどね。
この自信のない性格が一番の問題なんじゃないかな?
ふふふ〜、これは鍛え甲斐がありそうだね〜。




