79 魔女の懸念
アル君に〝呪い〟について打ち明けた。
話す気はなかったんだけど、もう誤魔化すのも無理っぽかったからね。
何やら難しい顔で考え込んでいるみたいだけど、私の〝呪い〟を知って、何を思っているのかな?
結局はアル君も別室には行かずに、私と同じ部屋で泊まることになった。
とは言っても、アル君はベッドには入らず、ずっと何か考えを巡らせている様子だったけど。
せっかく男と女が同じ屋根の下で寝ることになったってのに、特に色気のある展開にはならずに夜が明けちゃったよ。
まあ、私にとってアル君は子供みたいなものだし、そんな雰囲気になるわけないけどね。
「おはようございます、お師匠様。よく眠れていたようで、何よりです」
「ん~~っ、おっはよ~アル君。良い朝だね」
朝起きると、アル君が椅子に座りながら声をかけてきた。
私は熟睡していたけど、もしかしてアル君、ずっと起きていたんじゃない?
「私はこの後、源泉の確認に行くつもりだけど、アル君はどうするんだい? そもそも、今更だけど国を抜け出してきて大丈夫なのかな?」
「ご心配なく。陛下より、お暇を頂いているので私も当分は自由に動けます」
ルヴェリューン王国はスタンビードが起きたばかりで、今は忙しそうな時に休暇を?
それはそれで大丈夫なのかな?
まあ、あまり深く追求する気はないけどさ。
「私もお師匠様の調査に付き合ってよろしいですか?」
「それは構わないけど、せっかくの休暇なんだったら、観光でもして楽しんだ方がいいんじゃないかい?」
「そう言われても、まだ観光を楽しめる状況ではないと思いますが」
それもそうだね。
魔物は退治したし温泉の異常も直ったみたいだけど、まだ安全確認のために様子を見るそうだから入れないみたいだし。
「ところで、源泉の確認とは一体何のために? まだ魔物が潜んでいる可能性でもあるのですか?」
「それもあるけど、もっと気になることがあるんだよね」
「気になることとは?」
「ま、それは後で説明するよ。それよりも、まずは朝食にしようか。昨日はろくに食べていなかったから、お腹空いちゃってるからね」
今、ちょっとお腹が鳴っちゃったよ。
アル君に聞こえなかったかな?
やっぱり弟子の前では、師匠としての最低限の威厳は保ちたいからね。
それに空腹は不死身の私にとって、天敵のようなものなんだよ。
極限までお腹が空いても餓死出来ないって、結構ツライのだよ。不死身といっても万能じゃないのさ。
これも〝呪い〟だからなのかな?
というわけで、アル君と一緒に宿の食事を摂ることにした。
観光名所の首都の宿だけあって、なかなかに美味しく、値段の割に量も多かったから満足、満足。
お腹いっぱいになったことだし、このまま観光巡り······じゃなくて調査開始だ。




