75 魔女の弟子の弟子
崩れた建物を修復して、溶岩を片して、そんなこんなで、あっという間に町は元通りになりました!
私の力を持ってすれば、このくらい朝飯前さね。
ま、私だけじゃなくて、アル君も手伝ってくれたけどね。冷え切った溶岩の除去が、思ったよりも手間取ったから助かったよ。
復旧作業には他にも、ラエン君やローグ君達も活躍してくれていたから、私達だけの手柄じゃないけどね。
そうして緊急事態宣言は解除され、町には住人も戻ってきた。
温泉が再び使えるかは、改めて源泉を確かめる必要があるけど、住人の話を聞く限りだと、温泉は溶岩の被害を免れていて、その上、元通りに使えているらしい。
まあ源泉の方は後日、見に行くとしますかね。
「改めて、我が国の危機を救ってくれたことを感謝する。アルディラーズ殿、そして······ティア」
国の代表として、ラエン君が私達にお礼を言って頭を下げてきた。
国を救った英雄として表彰したいから、城まで招待すると言われたけど、それは辞退したんだよね。
さすがに堅苦しいのは御免かな〜。
「あっはっはっ、礼はいらないさね。私達はたまたま居合わせて、やれることをしただけだからね」
「ティアらしいな······」
私の軽口に慣れてきたのか、ラエン君は苦笑いを浮かべて、そう言った。
「今更だが、ティアは溶岩に呑まれていたのに、どうやって生き延びていたんだ?」
聞くタイミングがなかったからか、ラエン君が本当に今更な質問してきた。
まあ、普通なら死んでるからね。
ラエン君の口調から察するに、ずいぶん心配してくれてたみたいだ。
「そこは天才魔術士様にかかれば簡単さね。全身を「氷」魔法で包んで、溶岩の熱を遮断し続けていたのだよ」
「そ、そんな規格外なことを。だが、実際ティアは生きているのだし······可能、なのか」
ラエン君が信じられないといった反応を見せた。
これはウソではなく、そうやって溶岩を防いでいたのは本当さね。
私は不死身でも、痛覚なんかは正常だから、そうでもしないと気が狂うレベルの熱さだったよ。
まあ、不死身じゃなければ確実に死んでいただろうけどね。
「まあまあ、細かいことは気にしない気にしない。犠牲者も出ず、町や温泉も元通りになってよかったじゃないか。あっはっはっ!!」
実際、犠牲者が出なかったのは王国騎士達や冒険者達の住人の避難誘導が迅速だったからであって、私の力によるものじゃないからね。
皆の力を合わせた結果なのだよ。
「ところで、これも聞いておきたいのだが、ルヴェリューン王国騎士のアルディラーズ殿は、何故我が国に?」
ラエン君がアル君に問いかける。
それは私も聞きたかったんだよね。
「深い理由はありません。ルヴェリューン王にお暇をいただいたので、観光で寄ったまでです」
しれっとアル君はそう言ったけど、本当かな〜?
ルヴェリューン王国は魔物大量発生が起きたばかりで、理由もなく休みをもらえる程、暇じゃなかったはずだけど。
まあ、エヴォマース王国は温泉が有名な観光地で、そういう疲れを癒すには、うってつけの場所でもあるけど。
「まあまあ、詳しい話はまた明日でいいんじゃないかい? お互い、今日はもう疲れているだろうしね」
話が長くなりそうだったから、私は少し強引に終わらせることにした。
アル君は、あれくらいで疲れるような鍛え方はしていないけど、ラエン君の方は結構無理してそうだからね。
話し合いは、後日にした方がいいだろうさ。
私も、今日のところは温泉で癒されたいし。
「そう······だな。なら、これだけ聞かせてくれ。ティアはアルディラーズ殿と知り合いのようだが、どういう関係なんだ?」
最後にラエン君がそんな質問をしてきた。
正直に私の正体を教えてもいいんだけど、それはそれで面倒なことになりそうなんだよね。
だから私は、敢えてこう言った。
「よくぞ聞いてくれたね、私はこの御方の一番弟子なのだよ。ね、アルディ師匠様」
私の言葉を聞いたアル君が、一瞬苦笑いを浮かべたのを見逃さなかったよ。




