74 騒動の終結
死ぬ! 死なないけど死ぬ!!
いくら不死身の私でも、溶岩に潜るのは本気でキツい!
全身、文字通り焼けるほど熱いし、目や口を閉じていないと体内にまで侵入してくるんだから!
ま、全身焼けただれようが、すぐに再生して死ぬことはないんだけどね。
いっそ死ねた方が楽だろうよ。
それよりも、なんで私が溶岩を水中遊泳してたかと言うと、巨人の体内に侵入して、直接〝核〟を探し出すためだよ。
どうにも外からだと、コイツの〝核〟の位置を上手く掴めないからね。
魔法で全身を氷漬けにしたり、バラバラに吹き飛ばしても、〝核〟を破壊出来ずに復活しちゃうから、確実に見つけるための力技だ。
勇者と共に戦った当時は、まだ私は不死身じゃなかったから、こんなことは出来なかったけど。
そうして、熱い熱い巨人の体内を泳ぎながら、ついに〝核〟を見つけ出せたよ。
コイツの〝核〟は、体内を自由自在に移動させられるようで、敵からの攻撃も、それで上手く避けていたようだ。
道理で、どんなに攻撃しても破壊出来なかったわけだよ。
しか〜し、今の私にはそんな小細工は通用しないのさ!
ま、溶岩の中での追いかけっこは、かなりキツかったけどね。
〝核〟を掴み、巨人の体内から抜け出した私の目に、最初に映ったのは、ルヴェリューン王国にいるはずのアル君だった。
なんでアル君がここにいるのさ?
周りを見ると、どうやらここは首都の中心部だね。巨人の体内にいたから、外の様子はわからなかったけど、いつの間にか町まで降りてきていたようだ。
高台の方には、ラエン君やローグ君達の姿も見える。全員、無事のようで何よりだよ。
「相変わらず、神出鬼没ですね。お師匠様」
私を見るなり、苦笑いを浮かべそうな口調でアル君が声をかけてきた。
なるほどね。
どうしてアル君がここにいるかは置いておくとして、どうやら町の住人を守るために、巨人や魔物、そして溶岩を食い止めていたんだね。
「とりあえず、これを着てもらえますか? 今のお師匠様の姿は、色々と目に毒です」
アル君はそう言って、大きめのシャツを差し出してきた。あ〜、そうか。
溶岩の中を泳いでいたから、私の服が完全にダメになっちゃってる。
身体はいくらでも再生するけど、着物は元には戻らないからね。
「も〜、アル君ったら、意外とムッツリなんだね」
「茶化すのは後にして、早く着てください」
まったく、顔に出さないようにガマンしてるけど、恥ずかしがっちゃって。
せっかくのアル君の厚意だし、ありがたく受け取りますかね。
遠目からラエン君達だって見てるし、いくら私に羞恥心がないと言っても、進んでストリップなんてするつもりはないよ。
さてさて、それよりも問題の巨人なんだけど、完全に沈黙しているね。
溶岩の身体は冷えて、ただの炭の塊になって徐々に崩れていっている。
やっぱり最上位種とはいえスライムには変わりないから、〝核〟を失えば、その身体を維持出来ないようだ。
周囲の溶岩も同じように冷えていき、活動を止めている。もう大丈夫そうだね。
当時、勇者とあれだけ苦労して追い詰めたとは思えないくらい、今回はあっさり片が付いたものだ。
まあ、まだ確認しなくちゃならないこともあるけどね。
それよりも、細かいことは後で考えるとして、まずはこの荒れた町を元通りにしないとならないかな。
そんな時こそ、私の出番!
天才魔術士ティア様の活躍に、ご期待あれだよ。




