73 灼熱の巨人、沈黙
(ラエンside)
アルディラーズと灼熱の巨人の戦いが始まった。
「氷」は完全に溶けて、溶岩も巨人の足元からどんどん溢れ出てきている。
あの場に立っているだけでも危険だが、アルディラーズは平然と巨人を見据えている。
「オオオーーッッ!!!」
巨人がアルディラーズに向けて、腕を振り下ろした。アルディラーズはそれを避け、器用に溶岩の及んでいない足場を利用して、巨人に迫る。
「秘剣、斬衝閃!!」
アルディラーズの剣が、巨人の頭を砕いた。
さらに、砕いた肉片を「氷」魔法で固め、新たな魔物が生まれる前に粉々に吹き飛ばした。
完全に粉々にすれば、魔物は生まれないようだ。
頭を失った巨人だが、動きを止めることなくアルディラーズに攻撃を仕掛けた。
失った頭も、首部分が徐々に盛り上がり、元通りに再生しようとしている。
全身を粉々にしない限り、倒せないのか?
「なかなかにしぶとい。だが、この程度!」
アルディラーズは巨人の攻撃を涼しい顔で受け流す。両腕からの叩きつけや、溶岩を撒き散らす攻撃など、巨人は次々と猛攻を仕掛けるが、アルディラーズにはそれらが一切通じていない。
ルヴェリューン王国最強の騎士の武勇伝は色々聞いたことがあったが、それなりに誇張されていると思っていた。
だが、目の前の戦いぶりを見るに、それらの話が真実だったのだと思い知らされた。
「すげぇ······何者だよ、アイツ」
「上位冒険者でも、あんな戦い方を出来る人はいないわよ」
ぼくと同じく、アルディラーズの戦いを見守っていたアルフとメイラと呼ばれていた冒険者の会話が聞こえた。
ローグや他の冒険者、そして王国騎士達も、彼の戦いを息を呑んで見ている。
――――――――――!!!!!
アルディラーズの「氷」魔法で、巨人は全身を氷漬けにされた。
だが「氷」はすぐにひび割れ、巨人が動く。
巨人も一筋縄で倒せる相手ではない。
「私の最大奥義で一気に決めてやろう。これで終わりだ」
アルディラーズが一度、剣を鞘に収め、何やら構えを見せる。
彼の全身に、尋常ではない魔力が集中しているのが、この距離からでも感じ取れる。
今までの攻撃とは比ではない、とてつもない一撃を繰り出そうとしているようだ。
「··················ん?」
しかし、攻撃を仕掛けようとした刹那、寸前で動きを止めた。
どうしたのかと目を向けると、どうにも巨人の様子がおかしい。
「氷」を砕き、再びアルディラーズに攻撃を加えようとしたところで、不自然に動きを止めていた。
一体どうしたというんだ?
――――――――――!!!!!
巨人の身体の胸の辺りから、何かが飛び出してきた。それと同時に巨人の全身が黒く変色していき、完全に沈黙した。
なんだ、一体どうしたんだ?
「熱っ!!! あっっつっ!!! 死ぬっ、本気で死ぬとこだった!!」
騒がしい声が聞こえてきたので、反射的にそちらに目を向けた。
巨人の身体から飛び出してきたのは······ティア!?
本当にどういうことだ!?




