68 巨人の正体
ちょっとばかし面倒な魔物を相手に、大魔法をぶちかまそうかと思っていたら、ローグ君、そしてアルフ君とメイラちゃんが現れた。
「あっちぃな!? どんどん溶岩が溢れてきてるぞ。それに、あの巨人はなんなんだよ?」
「アルフ、無駄口叩いてる場合じゃないわよ!」
こんな状況でも、いつも通りの二人だね。
なんだか安心するよ。
「嫌な予感がしたから追ってきたんだが、想像以上にヤバい事態だな······」
「どうして来たんだい? 避難するよう言ったのに」
「そりゃあ、お前らが心配だったに決まってるだろ」
私の問いにローグ君が答えた。
やっぱりローグ君は面倒見が良いというか、お人好しなんだね。
「ティア、あなた達も! 今は無駄話をしている場合じゃないぞ!」
ラエン君の言う通りだね。
早いところ、この事態をなんとかしないと。
「ローグ、ラエン君をお願いするよ。アルフ君にメイラちゃんも、ちょっとばかし離れていた方がいいよ」
せっかく来てくれたんだから、ローグ君達にラエン君のことを任せよう。
「お、おい······ティア、何をするつもりだ?」
「ちょ〜っとばかし、危険な大魔法を撃つからね。さ、離れて離れて。凄い音も出るから、耳も塞いでいた方がいいよ」
私が両手に魔力を集中させると、ローグ君もそのヤバさを感じ取ったみたいだ。
ラエン君を連れ、アルフ君とメイラちゃんにも下がるよう指示を出した。
「オオオッ············」
巨人は離れていくローグ君達には気にも留めずに、私を見下ろしている。
私の両手に集めている魔力を警戒しているのかな?
それとも、もしかして私のことを覚えている?
お前と戦うのは初めてじゃないんだよね。
当時の私じゃ勇者の手を借りなきゃ、手も足も出なかったけど、今は違うよ。
今の私の力、思い知るがいいさね。
「デスプロージョン!!!」
巨人の身体の中心部まで魔力を送り込み、一気に爆発させた。
小規模のとは桁違いの、大規模爆裂魔法さね。
威力が大きすぎるため、周囲に被害を出さないようにするのは骨が折れるけど、今の私には朝飯前だよ。
身体の中心から弾け飛んだ巨人は文字通り、爆散した。
「すっげぇ······なんて威力の魔法だよ」
両耳を塞ぎながらアルフ君が思わず、そうつぶやいていた。
本来なら、強力な魔術士が数人がかりで魔力を集中させて撃つ魔法だからね。
生半可な威力じゃないさ。
けど、厄介なことにあの巨人はこれくらいじゃ、まず死なないってことだ。
「待って、飛び散った巨人の破片が集まろうとしてるわよ······!?」
メイラちゃんが言うように、細かく散った巨人の破片が溶岩の中をウネウネ動いて、再び集まろうとしている。
「あれは、まさか、あの巨人はスライム系統の魔物だったのか?」
ラエン君の言う通り、巨人の正体は、自由自在に姿形を変えられるスライムの最上位種なのだよ。
さ〜て、厄介なのはここからだね。




