64 再び源泉へ
アルフ君、メイラちゃん、そしてローグ君と別れて、私とラエン君は再び源泉の場所に向かうために山道に入った。
「さてさて、ラエン殿下。お待たせして悪かったね。それじゃあ、改めて源泉の場所に向かおうか」
「そうだな。それじゃあ、先導頼みますよ。お師匠様」
そう声をかけたら、ラエン君からそんな言葉が返ってきた。おやおや、何やらさっきまでと態度が違うね?
「ぼくはティアの弟子なのだろう? だから、お師匠様と呼んだのだが、何か変だったか?」
さっき、ローグ君達にそう紹介したのを根に持っているのかな?
けど、別に弟子呼ばわりされて不快ってわけでもなさそうだよね。
「いやいや、変ではないさね。それじゃあラエン殿下、いや、ラエン君。私はキミを本当に弟子として接するけど、いいのかな?」
「構わないさ。頼りにしてるぞ、お師匠様」
あっさりと頷いたね。
まあ、今は騎士達もいないから文句を言われることもないし、ラエン君が望むのなら、それでいいかな。
それにしてもラエン君くらいの子に、お師匠様なんて呼ばれると、アル君やルー君の幼い時を思い出すね。
なんだか感慨深く感じるよ。
おっと、思い出に耽ってる場合じゃなかったね。
「さあさあ、それじゃあのんびりしてる暇もないし、ビューっと行くとしますかね」
さっそく私は移動用魔道具の魔法の絨毯を取り出した。これなら山道も関係なく進めるから徒歩よりも速いし、魔物が出ても振り切れるからね。
「これは······絨毯か? これで山道を登れるのか?」
初めて魔法の絨毯を見たアルフ君達と同じような反応だね。
私のオリジナルとはいえ王族クラスでも、こういう魔道具は珍しいのかな?
似たような移動用魔道具くらい、ありそうだけど。
私が先に絨毯に乗り、ラエン君がそれに続く。
私達二人が乗ってもフワフワ浮いている絨毯に、ラエン君は驚いていた。
「こんな魔道具は初めて見たぞ。一体どこで、こんな高度な物を······」
「さあさあ、詳しい話は後さね。それじゃあ、出発〜!!」
私は絨毯に魔力を送り、移動を始めた。
かなりの速度で山道を進んでいく絨毯に、ラエン君は驚きよりも、興味の方が出てきたみたいだ。
魔法の絨毯を操作する私に、ラエン君が質問してきた。
「ティア、君は本当に何者なんだ? 魔術士としての力だけでなく、神官の魔法も使いこなし、これほどの魔道具をも持っている。ぼくを弟子として扱うと言っていたが、つまりは本当の弟子もいるということだろう? とても見た目通りの年齢とは思えないぞ」
ほほう、なかなかに鋭いね。
まあ、ラエン君も魔術士としての素質は充分にあるし、あれだけ魔法を使うとこを見せたら、そりゃあ感付くか。
「言ったはずだよ、詳しい話は後だと。まあ、これだけは言っておくよ。私は天才魔術士ティア! そんな私の偉大さを理解したなら、存分に崇めるがいいさね。あっはっはっはっ!!!」
弟子としても接すると言った以上、色々と指導してあげたいけど、それは異変を解決してからだね。
尊敬の眼差しに、気分良く高笑いをしたら、何故かラエン君は微妙な表情を見せた。
「············やっぱり見た目通りの年齢かもしれないな。いや、精神は見た目より幼いかもしれない」
失礼な。
私は見た目も中身も、永遠の18歳なのだよ。




