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62 首都の危機

 かなり大きな地震が、結構長く続いている。

 魔物の気配はないから溶岩大亀(マグマタートル)のような、大型の魔物が近付いてきているわけじゃなさそうだけど。



――――――――――!!!!!



 突然、地面が割れて火柱が噴き出した。

 いや、これは溶岩だね。

 源泉のお湯が温く感じるくらいの熱量だ。

 でも、山が噴火しているわけでもないのに、こんなところで溶岩が噴き出るなんて、おかしいね。


「ラエン様、ここは危険です!」

「わかっている! 皆、急いで引き返すぞ!」


 おっと、のんびりそんなこと考えてる場合じゃないか。騎士達の言葉を受けて、ラエン君が撤退を指示した。

 確かに、ここにいたら危険だね。


「ディープフリーズ!!」


 私は噴き出る溶岩に向けて、「氷」魔法を放った。

 溶岩の表面が厚い氷で覆われ、これ以上、噴き出るのを抑えている。

 ただ、ジュワァアアッと氷が溶けてる音がしているから、時間稼ぎにしかならないね。

 しばらくしたら、また噴き出てくるだろう。







 私達は急いで山を下りて、首都マウンリューズまで戻ってきた。

 ラエン君が騎士達に王城への報告、そして町の住人の避難させるよう、指示を出した。

 源泉を調べるどころじゃなくなっちゃったね。

 このままだと私の張った氷が溶けて、溶岩が噴き出し、首都が呑まれちゃうかもしれない。


「ティア、大体でいい。お前の魔法で張った氷、どれくらい持つと思う?」

「ん〜、あの様子だと持って半日ってところじゃないかな」


 ラエン君の質問に私は正直に答えた。

 私の張った氷は強力で、ちょっとやそっとじゃ溶けないけど、さすがに溶岩をいつまでも食い止めるのは無理だろうね。

 さらに魔法をかけ続ければ、もっと長い時間持つだろうけど、それじゃあ根本的な解決にはならない。


「これはぼくの考えであって根拠などないが、あの溶岩がただの自然現象とは思えない。今回の異変と関係があるかもしれない」


 それは私も思ったね。

 あんな場所から溶岩が噴き出るなんて、ちょっとどころじゃなく、おかしいよね。

 だから私は、ラエン君達が城に引き返したら、改めて調べに行くつもりだったんだけど。

 騎士達もいなくなって、ようやく自由に動けると思っていたし。


「だから、もう一度ぼくをあの場所まで連れて行ってくれないか? ティアも行くつもりだったんだろ?」


 おや、どうやらバレていたようだね。

 しかし、また連れて行ってほしいとは、ちょっと返答に困るお願いだね。


「護衛はどうするのさね? まさか、騎士達に黙って行くつもりかい?」

「そのまさかさ。住人の避難誘導は父上や騎士達、それに冒険者に任せれば心配いらないだろう。もう悠長にしていられる時間はない」


 まあ、のんびりしてられるような状況じゃないよね。住人の避難誘導が迅速に行われても、町に溶岩が押し寄せれば、それだけで一大事だ。

 ラエン君の父上······国王のことだね。

 国王にこのことを報告して、判断を仰ぐのを待つ時間すら惜しい状況だ。


「つまり、私は護衛役を継続ということだね。しかし、いいのかい? 騎士達が言っていたように、私みたいな得体の知れない冒険者を信用しても?」

「構わないさ。これでもぼくは、人を見る目はあるつもりだ。まだ行動を共にして短いが、ティアの人柄は大体わかったつもりだ。それに、騎士達が束になっても歯が立たなかった溶岩大亀(マグマタートル)をあっさり討伐してしまうティアが悪人だったら、とっくにぼくも騎士達も無事ではなかっただろう」


 ほうほう、嬉しいことを言ってくれるね。

 ラエン君の人を見る目が確かなのか、それとも、たまたまなのかはわからないけど、今回は大当たりだね。

 当然私はラエン君を害する気なんてないからね。


 本当は一人で行って、ちゃちゃっと元凶を突き止めようと思っていたけど、そこまで言うのなら連れて行くとしますかね。

 さっきまでの出来事を見る限り、ラエン君の魔法の腕はなかなかのものだったし、こんな事態でなければ私が直々に鍛えてあげたいと思っていたんだよね。



 他の騎士達がいる状況ならともかく、ラエン君一人くらいなら溶岩大亀(マグマタートル)級の魔物が何体現れようと守ってあげようじゃないか。




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