61 溶岩大亀
源泉を調べていたら溶岩大亀という、結構強力な魔物が現れた。
騎士達じゃ歯が立たないみたいだし、ここは私の出番かな?
「凍てつく冷氷を降らせ······」
そう思っていたら、ラエン君に先を越された。
あの詠唱は「氷」系魔法だね。
確かに、あの魔物は見た目通り、「氷」系魔法が弱点なのは間違いない。
「アイシクルスコール!!」
ラエン君の魔法が放たれ、魔物に向けて無数の氷柱が降りそそいだ。
氷柱の先は鋭く、溶岩大亀の岩のような皮膚でも貫けそうだね。
「――――――――――ッッ!!!」
魔物の口から高熱のブレスが放たれ、向かってきた氷柱がすべて溶かされてしまった。
あのブレスは源泉のお湯よりも、遥かに熱そうだね。
「ラエン殿下、お下がりください!」
さらに魔物は、ラエン君に向けて高熱のブレスを吐いた。騎士達が必死に庇おうとしてるけど、あれは直撃したらマズそうだ。
――――――――――!!!!!
当然、黙って見てるだけのつもりはないよ。
私はラエン君や騎士達の前に立ち、魔物のブレスを防いだ。
この程度の攻撃なら、魔法障壁を張るまでもない。
「ティ、ティア······? 今のを、下級魔法をぶつけただけで相殺したのか······?」
「あっはっはっ、少し下がっていたまえ、ラエン殿下に騎士君達。これから、この天才魔術士ティア様の実力を見せつけてあげようじゃないか」
呆然としているラエン君や騎士達に構わず、私は溶岩大亀と向き合った。
自身のブレスを防がれたというのに、私を見ても警戒している様子はないね。
見たところ、かなりお腹が空いているらしく、私のことをエサとしか見えていないみたいだ。
「――――――――――ッ!!!」
今度はブレスじゃなくて、大粒の石······溶岩の塊を吐いてきた。
触れただけでも、ヤケドじゃ済まなそうな熱を帯びているね。
そんな溶岩の塊を、高速でいくつも吐き出してきた。
「あっはっはっ、その程度の攻撃じゃ私には届かないよ」
さすがに魔法障壁を張らないと厳しいね。
私は平気でも、ラエン君や騎士達に流れ弾が飛んで行っちゃうかもしれないからね。
溶岩大亀は私の魔法障壁を破ろうと、立て続けに溶岩の塊を吐いてくるけど、ビクともしない。
そこそこの魔力を込めた障壁だからね。
たとえ竜でも、簡単には破れないくらいの強度があるのだよ。
「「氷」魔法のお手本を見せてあげるさね。そ〜れ、アクアフリーズ!」
溶岩大亀の全身を水の膜で包み込み、次の瞬間、氷漬けにした。
死んではいないだろうけど、氷の中からの自力での脱出は困難だろうね。
私の「氷」魔法は、並の熱では溶けないのだよ。
「し、信じられん······溶岩大亀をいとも簡単に······」
騎士達のそんなつぶやきが聞こえた。
これだけの実力を見せつけたんだし、私を崇める気になったのかな?
まあ、それよりも他に魔物が出てくる様子はないみたいだね。
溶岩大亀なんて、普通こんなところで現れるはずのない魔物が出てきたんだし、何かしら異変の原因みたいなのがあったりしそうなんだけどね。
――――――――――!!!!!
そう考えていたら、今度は大きな地震が起きた。
新たな魔物?
いや、魔物の気配は感じられないね。
けど、何かイヤな感じはするよ。




