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6 冒険者シャクト視点

(シャクトside)


 俺はラーベリックの町を拠点に活動している冒険者だ。四人パーティーのリーダーを務めていて剣士のレッグ、魔術士のサーリィとタミアと一緒に活動している。


 最近、町では高熱で倒れる人が増え出していた。

 初めはただの風邪が流行っているだけかと思っていたが、熱を出した人達はなかなか回復せず、倒れる者が増える一方だった。


 そのため、熱を下げるための薬の材料である薬草の採取依頼が急激に増えていた。

 だが薬草にも限りがあるし、採取に向かう冒険者まで倒れる者が出てきた。

 俺やパーティーメンバーはまだ平気だが、いつ病気にかかるかわからない。

 とにかく今は俺達にできることをやらないとな。





 町を出て近くの森まで薬草を探しに来たが、入口付近は取り尽くされて見つからない。

 多少、危険だが奥まで入る必要があるな。

 俺達は冒険者になってそれなりに長いから大抵の魔物ならなんとかなる。





 そうして森の奥まで入っていったのだが肝心の薬草は全然見つからない。

 薬草を探していたため周囲の注意を疎かにしてしまい、魔物が接近していたのに気付くのが遅れた。

 攻撃的で厄介なブレードボアが現れた。


 ブレードボアは森の奥の方に生息する魔物で、刃のような体毛を持ち、気性が荒く動きも素早い危険な奴だ。

 ベテラン冒険者でも油断したらヤバい奴で、俺も相手にするのは初めてだ。



 俺やレッグの剣ではブレードボアの体毛を貫けず、サーリィとタミアの魔法も弾かれ、歯が立たない。

 とても敵いそうになく、俺が囮になって皆を逃がすしかない!


 俺は前に出て魔物を挑発した。

 魔物の注意が俺の方へ向く。

 まずは三人からなるべく引き離し、機をうかがって俺も魔物から逃げる。

 逃げ切れるかはわからないけどな······。

 そう覚悟を決めた時、突然凄まじい衝撃が起きて魔物を吹き飛ばした。



「やあやあ、少年少女達。手助けは必要かい?」

「え······あの······?」


 上空から魔術士と思われる女性が手を振りながら降りてきた。

 突然のことでうまく言葉が出ない。



「ほらほら、どうするの? あなた達に厳しい相手なら手伝ってあげるって言ってるんだよ。手助けは不要かい?」


 急かされるように言われてハッとした。

 吹き飛んだ魔物が立ち上がり、怒りの唸り声をあげていた。

 余計なことを考えている場合じゃない。


「ああ、すまないが手を貸してほしい」


 俺がそう言うと魔術士の女性はニッコリ微笑んで魔物の前に立った。


「ちょっ······、一人で戦うつもりか!?」


 手を貸してくれるのはありがたいがブレードボアは頑丈で魔法も効きづらい。

 一人で前に立つのは無謀だ。


「そ〜れ、ファイヤー!!」


 と思ったのだがブレードボアは魔法一発で倒れた。今のは下級魔法だったよな?

 上級魔法で焼き尽くすならまだわかるが、下級魔法一発で倒すなんて······。

 他の三人も呆然とした表情で見ていた。





 魔物が倒され、危機が去ったことは確かだ。

 俺達はお礼を言ってそれぞれ自己紹介をした。

 しかしブレードボアをあんなに簡単に倒すとは一体何者なのだろうか、この人?


「私は稀代の天才魔術士ティア! さあ存分に私を讃え、崇めるが良い! あっはっはっはっ!!」


 魔術士の女性は右手を前に構えて高笑いしながら言った。魔術士ティア······特に聞いたことのない名だな。

 だが、言動は少々アレだが実力は確かだ。

 俺達と同じか少し下くらいの年齢に見えるが、とてつもない魔力を秘めているようだ。





 ティアさんに町の現状を話すと自分は治癒魔法を使えるから病気の人々を治せると言った。

 ブレードボアを一撃で倒せるような攻撃魔法の使い手が治癒魔法まで使いこなせるのか?


 疑問に思ったがティアさんはそれを証明するようにレッグの傷を癒した。

 平気そうに振る舞っていたがレッグはブレードボアの攻撃を受けてかなりの重傷を負っていた。

 そんなレッグの身体を一瞬で癒やした。


 たとえ治療専門の神官であってもレッグのあの傷を治すには時間がかかると思ったのだが。

 攻撃魔法だけでなく治癒魔法まで一流だとは······。

 だが、これなら病気で苦しんでる人達を救えるかもしれない。





 俺達はすぐにティアさんを連れてラーベリックの町に戻ってきた。

 ティアさんは町の入口にある不老不死の魔女ネイティアースの石像を見上げていた。

 やはり魔術士の最高峰とも言われる不老不死の魔女には何か思うところがあるのだろうか。


「ってティアちゃん!? 何魔法をぶっ放そうとしてるんだよ!」


 そう思って見ていたらティアさんが手に魔力を込め出した。

 慌ててレッグが止めに入る。



「ん〜? 不老不死の魔女様の像なら私の魔法にも耐えられるかな〜と思ってね」

「ティアさん······」

「あっはっはっ! 冗談だよ、ジョーダン」


 本当に冗談だったのか?

 サーリィも本気だったのではないかと疑いの目を向けているぞ。




 まあ、今はそれよりも優先すべきことがある。

 ティアさんに町の現状を知ってもらうために、まずは俺達の活動拠点である冒険者ギルドへと向かった。

 冒険者ギルドにも高熱で倒れた患者が集められている。


「あっはっはっ! 私は天才魔術士ティア! 私が来たからにはもう安心だよ。さあさあ、病魔からこの町を救ってみせようじゃないか」


 ティアさんはそう宣言するとギルド内の人達の病気をあっという間に治してしまった。

 町の神官でも簡単には完治させられなかった人達を簡単に······。



 その後もティアさんは町中を周り、すべての患者の治療を完了させていた。

 あれだけの人数の治療をしたにも関わらず、ティアさんはまるで疲れている様子がない。

 並の神官や魔術士とは魔力量が比べ物にならないということだろう。



 俺達と大して変わらない年齢のはずなのにこれ程の実力を持っているなんて······。

 ティアさんって一体何者なのだろうか?



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