57 王子君の提案
エヴォマース王国の王子君のピンチに、颯爽と現れた謎の美少女魔術士ティア。
その正体や如何に!?
な〜んて冗談を言ってる場合じゃないか。
まだまだ周囲はたくさんの魔物、ロックエイプに囲まれている。
ここは私の腕を見せてあげようじゃないのさ。
「そ〜れ、プチプロージョン!!」
――――――――――!!!!!
私は小規模の爆裂魔法を空に向けて放った。
小規模といっても、音と爆風は凄まじいよ〜?
その証拠に、ロックエイプ達はビックリして完全に怯えちゃっているからね。
騎士達や王子君も驚いているけど、鼓膜が破れるほどの音じゃないから心配ないよね?
「「「キィイーーッ!!??」」」
ロックエイプ達は我先にと、山の奥の方へ逃げ出していった。
ロックエイプは縄張りに入り込まなければ、そうそう襲いかかったりしてこないからね。
もう人を襲っちゃダメだよ〜。
「な、何者だ! 貴様は」
魔物が逃げ帰り、状況把握に時間がかかっていたけど、我に返った騎士達が、私に武器を向けて問いかけてきた。
私はキミ達が守るべき、王子君の危機を救ったんだよ?
武器を向けるなんて、酷くないかな。
それに、ちゃんと名乗ったはずなんだけどな〜?
「私は天才魔術士ティア! さあさあ、救世主である私を存分に崇めたまえ。あっはっはっ!!」
仕方無いので、もう一度名乗ったよ。
ちゃんと聞こえてるはずなのに、騎士達の反応が悪いね?
私はこういう者だよと、冒険者ギルドカードも見せてみた。
「ぼ、冒険者······か。しかし、この山道は我々以外の立ち入りを禁止していたはずだが······」
ああ、隠密魔法でコッソリ通ってきたからね。
やっぱり、無断で来たのはマズかったかな?
「私は今日、首都に来たばかりでね。温泉に入りたかったのに、入れないじゃないか。原因解明をそんな悠長にしてていいのかい?」
観光名所の目玉が、いつまでも閉鎖されているのは、王国側だって困ることだろう。
どうやら、王国騎士団が率先して原因解明に乗り出しているみたいだけど、冒険者とも協力した方が良くないかい?
「我々とて、無策でいるわけではない。今日来たばかりだというなら知らんかもしれないが、源泉に続く、この山道の魔物が異常に活性化しているのだ。下手に刺激すれば、町まで下りてくるかもしれん」
ああ、それで慎重になっていたんだね。
山道の入口付近は魔物避けの魔道具や結界魔法が張ってあったから、通常なら魔物は近寄ってこないだろうけど、興奮状態だと、破られる可能性があるからね。
活性化の原因は、やっぱり源泉かな?
スライムの時のように、源泉に魔物を活性化する成分が混じっていて、飲んだり触れたりした魔物が興奮状態になっているということかな。
まあ、まだ源泉が原因かわからないし、予想通りだったとしても、なんでそんな成分が混じっているんだって話だけど。
「ともかく、異常の原因は我々が調べる。おとなしく、町まで引き返せ」
そう言われても、私自身の目で確かめたいんだよね。だからって、強行突破はさすがにマズいかな。
う〜ん、どうしようかな〜?
「待て。ぼくは、この人を一緒に連れて行った方がいいと判断する」
どうにかしようと考えていたら、今まで黙って私達のやり取りを見ていた王子君が、そう口を挟んできた。
ナイス、王子君!
その案、私も乗ったよ。




