56 エヴォマース王国騎士団と王子
さあ、まずは温泉の異常の原因の元がある可能性が高い、源泉の確認だ。
とは言っても源泉に原因があるなんて、真っ先に思い至りそうだし、とっくに調査はされているかな?
源泉のある山道への入口は、厳重に封鎖されていたけど、簡単に素通り出来た。
見張りの人もいたけど、私の隠密魔法でちょちょいとね。
天才魔術士ティア様に不可能はないのだよ。
山道はちゃんと整備されていて、特に障害物もなく、サクサク登っていける。
風魔法でビューンと飛んでもいいんだけど、異変の見落としがないように徒歩で向かっている。
道中、特に不審な点は見当たらない······。
――――――――――!!!!!
と思っていたら、急に騒がしい音が聞こえてきたね。これは戦闘音かな?
結構、激しい感じだね。
複数の人達が、魔物の群れと戦っているみたいだ。
私はすぐに音の聞こえてくる方に向かった。
「ラエン様、お下がりください!」
「ここは我々が······!」
立派な鎧を身に着けた集団、あの装備は冒険者じゃなくて騎士団だね。
エンブレムが見えたから、あれはエヴォマース王国の騎士団に間違いなさそうだ。
こんなところに騎士団がいるのは、私と同じく源泉の調査に来ていたのかな?
そんな騎士達を襲ってきているのはロックエイプという、主に岩石地帯を縄張りにする猿の魔物だ。
ザッと見て、数十匹くらいいる。
ロックエイプは単体では大した強さじゃないけど、群れになると連携を取ってきて、結構厄介なんだよね。
騎士は10人くらいだね。
歴戦の猛者って感じで、魔物相手の立ち回りも見事なものだ。
そしてその中に一人、明らかに騎士ではない格好の人物がいる。
鎧ではなく、動きやすそうな軽装で、魔術士タイプの装備をしているね。
それも普通のではなく、かなり上等な物ばかり身につけている。
そして騎士達は、それなりの年配と思われる人達ばかりだけど、その魔術士だけは、やけに若い見た目だ。
アルフ君達より、少し下くらいかな?
それなのに騎士達に〝ラエン様〟と敬称付きで呼ばれていたね。確か、エヴォマース王国の王子の名前だったかな?
アレクバイン王国に居た時に、何かの資料で見た記憶があるよ。
つまりは王子率いる騎士団が、異変の調査に乗り出しているということかな?
ま、そんなことを考えるのは後だね。
「紅蓮の炎よ、すべてを焼き尽くせ! フレアウォール!!」
王子君が「炎」の魔法を放ち、魔物を焼き尽くしていく。
ほほう、中級魔法であれだけの威力を出せるなんて、なかなかに優秀じゃないか。
今の年齢を考えたら、将来有望だね。
「キィーーッ!!」
「······!? しまっ······」
ロックエイプの何匹かが、仲間を守る壁となって「炎」を防いでいたようだ。
無事だった個体が、魔法を放った直後で油断していた王子君に襲いかかっていった。
「ラエン様!?」「ラエン殿下······!?」
他の騎士達は、それぞれ襲い来る魔物に対応していたため、王子君の守りに間に合わない。
――――――――――!!!
「キキィーーッ!!?」
もちろん、見殺しにする気はないよ。
私は王子君の前に躍り出て、魔法で魔物を吹き飛ばした。
「い、一体何が······?」
「稀代の救世主、天才魔術士ティア、華麗に美麗に麗しく参上!! あっはっはっ!!」
突然のことで、事態が飲み込めない王子君に向かって、私は高らかに名乗り上げた。




