54 エヴォマース王国首都〝マウンリューズ〟
私自慢の移動用魔道具、魔法の絨毯によって、あっという間にエヴォマース王国首都の前まで着いた。
やっぱり、たまにでも手入れをしておくべきだったかな?
魔力の伝達が上手くいかず、急ブレーキや急加速を何度も繰り返して、なかなかにスリリングが空の旅になっちゃったよ。
「すげぇな、ティア。本当にあっという間に着いちまったな」
アルフ君が絨毯から降りて言う。
アルフ君は、初めは空飛ぶ絨毯に驚いていたけど、すぐに慣れたのか、空の旅を楽しんでいた。
「ア、アルフ······ちょっと、手を貸して。腰が抜けて、うまく立てないわ······」
メイラちゃんは何度も楽しそうな叫び(悲鳴)をあげていたね。はしゃぎ疲れちゃったのかな?
ま、しばらく休めば元気になるよね。
さあさあ、それよりも。
ついにやってまいりました、エヴォマース王国首都〝マウンリューズ〟!!
周囲を山々に囲まれていて、いくつもの温泉が湧き出る観光都市の目玉!
ここに来るのは何十年ぶりになるかな?
前に来た時もずいぶん発展した町だったけど、あれから数十年も経つと、やっぱり相当変わってるみたいだね〜。
これは何があるのか、今から楽しみだよ。
おっと、異変のことも忘れてないからね。
メイラちゃんもすぐに回復して、私達は入口の門をくぐって、首都に入った。
観光都市だけあって、入口の警備も万全なようだね。ま、冒険者ギルドカードを出したら、問題なく入れたけど。
それよりも、町の様子はというと······。
「前に来た時に比べると、人が少ないな」
「本当、少し寂しい感じがするわね」
アルフ君とメイラちゃんが周囲を見回して言う。
ゴブリン騒動の時のリントスほどじゃないけど、人波がまばらだね。
観光の目玉である温泉が入れないとなると、やっぱり客足に影響しちゃうよね。
まずは冒険者ギルドに行って、スライム討伐の報告と、異変の現状を聞いておこうか。
「アルフ君、メイラちゃん。冒険者ギルドの場所はわかるかい?」
「ああ、確か大通りの方だったはずだ。リントスの町のギルドよりも大きな建物だったから、行けばすぐにわかるはずだぜ」
アルフ君が案内してくれたので、早速、冒険者ギルドに向かった。
確かに、大通りの目立つ場所にギルドの建物があったよ。さすがは首都にあるギルドだけあって、規模が大きいね。
「リントスで受けた依頼を達成したから、処理してもらえるか?」
「はい、別支部での依頼ですね。少々、お待ちください」
ギルドの建物の中に入り、アルフ君が受付で依頼達成報告をする。
アルフ君達の言う通り、別の町で受けた依頼も、問題なく報酬を受け取れるみたいだね。
けど、時間がかかりそうだし、その間私は情報収集でもしていようかね。
ザッと見回してもギルド内には、先に首都に向かったと言っていた、ローグ君の姿は見えないね。
もしかして、まだ首都に着いていないのかね?
魔法の絨毯が速すぎて、追い抜いちゃったかな?
「依頼なら、魔物討伐がほとんどだぜ。最近、魔物が活発化していて、異常発生が多いらしい」
依頼の貼り出しを眺めていたら、冒険者の人がそう教えてくれた。
魔物の活発化か〜。
スライムの件といい、温泉の異常と関係ありそうだ。もしかしたら、ゴブリン騒動もそれが原因だったかもしれないね。
これは早いところ、原因を突き止めて異常の元を断つ必要がありそうだ。




