53 首都へ向かって出発
アルフ君とメイラちゃんも、エヴォマース王国首都に向かうということなので、一緒に行くことにした。
旅は道連れって言うからね。
私としても、同行者が居てくれた方が楽しいし、大歓迎だよ。
「アルフ君とメイラちゃんは、首都には行ったことはあるのかい?」
首都はリントスの町から、そこそこ距離があるから、気軽に行けないと思うんだよね。
「ああ、あるぜ。といっても、数えるくらいだけどな」
「まだ冒険者になって間もない頃に、何度かローグさんに連れて行ってもらったことがあるくらいね」
なるほどね〜。
ローグ君は新人の教育をしていたみたいだし、経験を積ませるために連れて行ったのかな。
なかなか熱心に教育していたみたいだね。
この二人が将来有望ってこともあってかな?
「ティア、どこに行くんだ? 定期馬車の乗り場なら、あっちだぜ?」
「歩いて首都に向かうとなると、何日もかかるわよ?」
私が町の外に出ようとすると、二人がそう言って止めた。
首都までの馬車があるみたいだけど、それでも時間がかかっちゃうからね。
「あっはっはっ、さすがに歩いて行く気はないよ。移動用の魔道具があるから、それで首都まで一気に向かおうってことさね」
風魔法でビューンと飛んで行ってもいいんだけど、アルフ君とメイラちゃんもいるからね。
「そんな便利な物、持ってるのかよ。さすがは魔術士だな」
アルフ君が言う。
ずっと使ってなかった、収納魔法で仕舞いっぱなしのアイテムがあるんだよね。
「あっはっはっ、見て驚くがいいさね。その名も魔法の絨毯だよ」
というわけで早速取り出して、拡げてみたよ。
名前の通り、10人くらいは乗れる絨毯だ。
私のオリジナルの魔道具で、魔力で自在に操作して、高速で移動出来る優れ物さ。
ずっと昔、勇者達と旅していた時に重宝していた物さね。
一人だと風魔法で飛んだ方が早いんだけど、パーティーで移動するのに便利なのさ。
「確かに、フワフワ浮いているけど、本当にこれに乗って移動出来るんですか?」
メイラちゃんが少し心配そうに言った。
不安定に見えるけど、乗ってる間は簡易結界が張られるから、落ちたりすることはないよ。
「まあ、乗ればわかるさね。さ、首都まで急ぎたいから、早く乗って乗って」
私が先に絨毯に乗り、二人もそれに続いた。
「すげえな。オレ達三人が乗っても、まだ浮いてるぜ」
「ちょっと揺れて、怖いんだけど······」
アルフ君は珍しい物を見るように、メイラちゃんは少し不安気にしている。
「それじゃあ、しっかり掴まっててね。出発〜!」
掴まる場所なんてないけど、なんとなく言ってみたよ。私が魔力を込めると、絨毯が前進を始めた。
おや? ちょっと遅いね。
手入れを怠っていたせいか、魔力の通りが悪いみたいだね。ちょっと強めに魔力を送ってみるかね。
「うおっ!? 急に動きが······」
「ちょっ······速い速い速いっ!!?」
おおっ、思ったより急加速しちゃったよ。
昔はこんなことなかったんだけど、やっぱり道具の手入れは大事だね。
ま、速い分にはいいかな?
後ろで二人も楽しそうにしているし、このまま、首都までかっ飛ばそう〜。




