5 冒険者ギルドでの治療
さて、まずは情報収集のために懐かしき冒険者ギルドに向かおうかね。
シャクト君達の活動の拠点の冒険者ギルド。
町の住人から様々な依頼を受け、生活と治安を支える組織。
情報収集にもうってつけの場所だからね。
冒険者はほぼすべての国で活躍してるから、大体の町には冒険者ギルドはあるものなんだよ。
町に入ってしばらく歩くと冒険者ギルドの建物が見えてきた。
おお〜、以前とは比べ物にならないくらい大きく立派な建物になってるね〜。
「ティアさんって冒険者ギルドに登録してないんですか?」
建物を見上げていたらサーリィちゃんが問いかけてきた。してるといえばしてるかな?
勇者と出会った時はまだ新人冒険者として登録したばかりだったんだよね〜。
もう500年以上前に作ったギルドカードならまだ持ってるけど使えるかな〜?
「まあね〜。さっきも言ったけど私は自由をこよなく愛する魔術士だからね。ギルドに縛られるようなことはしていないのさ」
まあ500年前のギルドカードなんて出したら目立つし正体もバレることになるからね。
冒険者として登録してないことにしておこうかな。
まあ、そんなことよりも早く町の現状を把握しないとね。シャクト君を先頭に入口の扉を開け、中へと入った。
冒険者ギルドの中は簡易ベッドが用意されていて、何人もの人が苦しそうにうなされていた。
ギルドの職員だと思われる人達が慌ただしく動いている。
どうやら病気の患者が多すぎて冒険者ギルドの建物も臨時で病人を受け入れているらしい。
中には一般人だけでなく、冒険者と思われる屈強な身体付きの人物まで寝込んでいる。
まるで野戦病院だ。
うわ〜、思ってた以上に深刻だね。
「シャクトさん、戻ってこられたのですね! それで、薬草は見つかりましたか?」
ギルドの受付嬢がシャクト君に駆け寄ってきた。
受付嬢ちゃんはシャクト君より少し上くらいの年齢かな?
かなり切羽詰まった状況みたいだね。
「すまない、薬草はそれほど見つからなかった。その代わりに······」
シャクト君が先ほどの出来事を説明し、私のことを紹介した。
「治癒魔法の使える魔術士の方、ですか? 神官ではなく」
受付嬢ちゃんが困惑した表情で言う。
まあ私は見た目18歳の可憐な少女だからね。
そんな実力があるのかと疑いたくなる気持ちもわかるよ。
「あっはっはっ! 私は天才魔術士ティア! 私が来たからにはもう安心だよ。さあさあ、病魔からこの町を救ってみせようじゃないか」
なので私は受付嬢が不安にならないように自信満々に宣言した。
だからなんで君達はそんな残念な子を見るような目で私を見るんだい?
まあいいさ、それよりも早く病人を治してあげないとね。モタモタしてると死者が出かねない状況だし。
いくら私でも死人を蘇らせることはできないよ。
死霊術師の知り合いならいたけど。
まったく、薬草が足りないのはわかるけど、この町にいるはずの神官は何をやっているのかな?
こんなに病人を放置しているなんて············と思ったのだけど話を聞くと神官達も病人を治すために頑張っているらしい。
ただあまりに病人が多すぎるので手が回らなかったり、過労で神官の方まで倒れたりしてしまっていたとのこと。
そっか〜、そういえば普通の神官は症状の重さにもよるけど、患者一人の病気を治すのにも結構な魔力と時間がかかるものだったね。
私や私の弟子達が規格外だってのを忘れていたよ。
「さあさあ、面倒だしまとめて治してあげようじゃないのさ。そ〜れ、リフレッシュ!!!」
まあそんなことより治療、治療!
私は冒険者ギルド全体に広がるように治癒魔法を唱えた。重い病魔なら一人一人集中して看る必要があるけど、これくらいなら効果が拡散する範囲魔法でも充分のはずさね。
「あ······」
「熱が引いていく······」
「身体が急に楽に······?」
どんどん効果が出てきたようだね。
寝込んでいた人達の熱は下がり、顔色も健康的になっていったよ。
うんうん、やっぱり健康が一番だよね。
「う、うそ······みなさんの熱が一瞬で······」
受付嬢ちゃんが呆然とした表情でつぶやいた。
受付嬢ちゃんだけでなく他のギルド職員、そして何故か私の力を知っているはずのシャクト君達まで驚いているね。
さあさあ、ボーっとしている暇はないよ。
病人はまだまだいるんだろうからね。
ちゃっちゃと全員治しちゃお〜う!