46 観光再開
元凶だった女王を討伐したことで、ゴブリン騒動は解決した。
犠牲者が出ずに済んでよかったよ、本当に。
それはそうと私は大活躍をしてしまったため、冒険者達からはお礼と質問攻めの凄かったこと、凄かったこと。
「あっはっはっ! この天才魔術士ティア様に不可能はないのだよ。さあさあ、存分に崇め奉りたまえ」
こう言うと、いつもなら微妙そうな反応が返ってくるんだけど、今回は大活躍したばかりというのもあって、尊敬の念を込めた視線があったよ。
いや〜、それはそれでむず痒いね〜。
特にゴブリンの巣から助けた女の子達がそんな感じだったかな。
誰も心にも身体にも傷を負うことなく済んでよかったよね。
騒動はこれで終結したし、後はギルドの人達に任せておくことにしよう。
ここに残っていると、また色々と巻き込まれちゃいそうだし、私は町へ繰り出し、当初の目的だった観光を楽しむとしますかね。
もうすでにゴブリン騒動が終結した話は広まっているようで、町中に活気が溢れているようだった。
しばらくすれば外からのお客さんもやってくるだろう。やっぱり明るく楽しくするのが一番だよね。
さてと、この国の観光の目玉と言えば、やっぱり温泉!
首都ほどじゃないにしろ、このリントスの町にも天然温泉が湧き出ているので、そこでゴブリン退治の疲れを癒すとしますかね。
「あ、ティアさん」
「おや、アルフ君とメイラちゃんじゃないか。二人も戦いの疲れを癒しに来たのかな?」
温泉旅館の前に二人がいた。
アルフ君達も温泉に入りに来たのかな?
なかなかの高級旅館っぽいけど、今回の魔物討伐で結構な報酬が出たはずだし、それくらいの贅沢をしてもバチは当たらないだろう。
「そうしたかったんだけど、思ってたより宿泊費が高くてな······」
「ゴブリンとの戦いで武器や防具も傷付いちゃったし、あんまり余裕がないのよね」
なるほどね。
贅沢にお金を使うか、今後のために使うか悩んでいたんだね。
それなら、私が一肌脱ごうじゃないか。
「あっはっはっ、そういうことならお姉さんが奢ってあげようじゃないのさ。今回の討伐でたっぷり報酬をもらったし、それくらいしてあげるさね」
「え、でも······」
「若者が遠慮することないさね。ささ、一緒に温泉で癒やされようじゃないか」
「若者って······ティアさん、わたしと同じくらいじゃ······」
遠慮気味なメイラちゃんを強引に引っ張って、旅館に入った。アルフ君も私達に黙って付いてきたよ。
一人でのんびりもいいけど、やっぱり賑やかなのが一番だからね。
この町や他のオススメ観光地のことなんかも聞きたいし、一泊奢るくらいなんでもないのさ。
断るのも悪いと思ったのか、旅館に入るとメイラちゃんは頭を下げてお礼を言ってきた。
「それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわね。改めて、わたしはメイラよ。よろしくね、ティアさん」
「オレはアルフだ。ティアの治癒魔法のおかげで、未だに絶好調だぜ。あの時はありがとな」
そういえば、ちゃんと自己紹介していなかったね。
「いいってことさね。じゃあ私も改まって、我が名は天才魔術士ティア! さあさあ、存分に崇めるがいいさね。あっはっはっ!」
私が改めて自己紹介をすると、アルフ君は純粋に褒めてくれたけど、メイラちゃんは苦笑いをうかべて微妙な反応だったよ。
う〜ん、何かおかしかったかな?




