45 ベテラン冒険者ローグ視点②
(ローグside)
アルフとメイラを連れて、先走ったティアを追って奥に向かった。
もし本当にゴブリンキングが現れたんなら俺達冒険者だけで手に負える相手じゃねえ。
ティアは確かに治癒魔法だけじゃなく攻撃魔法も優秀な魔術士なのはわかったが、いくらなんでも無謀だ。
無鉄砲なティアをなんとしても連れ戻さねえと。
そうして先を急ぐと派手な音が何回も聞こえてきた。どうやら戦闘が起きているようだな。
ティアも心配だが、奥に行ったという他の冒険者達も気がかりだ。
音が響いてきた場所までたどり着くと、何組かの冒険者パーティーの姿があったが、すでに戦闘は終わっていた。
何人か疲労困憊で倒れている奴もいるが、犠牲者はいないようだ。
「大丈夫か? 一体何があった」
「ローグ、か。それがな、突然現れた魔術士の女の子がゴブリンキング共を······」
この場にいた冒険者達に話を聞くと、突然やってきた魔術士······ティアに間違いねえな。
ティアがゴブリンキングやその手下をあっという間に倒していったそうだ。
周りにはティアが放置していったゴブリンの魔石がそこら中に落ちている。
中にはとんでもない大きさの高純度の魔石もあった。ゴブリンキングがいたってのは本当らしい。
おいおい、たった一人でゴブリンキング率いる群れを倒すなんてどうなってるんだ?
周りの冒険者達でもゴブリンキングには歯が立たず、全滅を覚悟していたらしい。
話を聞いても信じられないことばかりだ。
「それでティア······その魔術士はどこに行ったんだ? 姿が見えないが」
「あ、ああ······女冒険者が何人かゴブリンに連れ去られたって話したら、すぐに助けに向かっていったぞ······」
ゴブリンキング率いる群れを倒したばかりで、活動的過ぎるだろ!?
聞いた限りじゃ、大魔法を何発も使っているはず。いくらなんでも、もう魔力が尽きてるんじゃないのか?
そんな状態でゴブリンの群れに囲まれたら、為す術がないはずだ。
話を聞いた俺は女達が連れて行かれたというゴブリンの巣まで急いだ。
俺だけじゃなく、他の冒険者パーティーも攫われた女達の救出のためついて来ている。
ゴブリンキングとの戦いで結構な傷を負っていたらしいが、ティアの治癒魔法ですでに全快しているそうだ。
「ねえ、ローグさん。あのティアって人、一体何者なんですか?」
メイラがそう聞いてきたが、俺にもわからなくなったぜ。優秀な神官かと思えば、ゴブリンキングすら倒せる大魔法の使い手でもある自称天才魔術士。
本当にアイツは何者なんだろうな。
問題のゴブリンの巣までたどり着いたが、周囲に魔物の気配は一切なかった。
戦闘の形跡は残っていたので、おそらくはティアが倒したんだろう。
巣の中に入り、奥まで進むとすぐに連れ去られた女達を見つけることができた。
皆、多少の混乱はあるが大きな怪我はしていない。女達から話を聞くと、やはりティアが駆け付けて巣の中のゴブリン共をあっという間に殲滅したそうだ。
そしてティアは、さらに奥にいるゴブリンの親玉を倒しに向かったらしい。
ゴブリンキングすらも上回る、魔物共の親玉。
一体どんな奴なのか、想像するだけで身震いがしてくる。
ともかく、いくら規格外のティアでもそんな魔物を相手にして無事に済む保証はねえ。
すぐにでも向かって俺も援護を······。
――――――――――!!!!!
その瞬間、凄まじい爆音と振動が響いてきた。
あまりの衝撃で洞窟全体が崩れるかと思ったが、なんとか持ち堪えていた。
今の衝撃は一体······。
魔物の親玉とティアが戦っている音か?
俺はすぐさま、音のした方まで急いだ。
するとそこには······。
「あっはっはっはっ!! 私の勝ちさね。安らかに眠りなよ、女王」
高笑いをあげながら勝利宣言をしているティアがそこにいた。
目の前には魔物の親玉の物と思われる、でかい魔石が転がっている。
どうやら俺の心配も虚しく、ティアはたった一人で今回のゴブリン騒動を解決してしまったようだ。




