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44 ベテラン冒険者ローグ視点①

(ローグside)


 俺はローグ。

 冒険者ランクCのそこそこのベテランで名が通っている。


 当然腕には覚えがあり、ゴブリンくらいなら問題ねえと思ったのがマズかった。

 強力な上位種に囲まれ、深手を負っちまった。

 自分でもよく生きて帰れたと思うぜ。



 ゴブリン大量発生の報告を受けて対応していたんだが、倒しても倒してもキリがねえ。

 その上、傷を負っちまって戦えなくなり、どうしようかって時にアイツは現れた。



 自称天才魔術士ティア。

 冒険者ランクは俺と同じCで、治癒魔法のエキスパートだと言っていた。

 実際、俺の傷をあっさり治してくれたから、神官(プリースト)として優秀なのは間違いねえ。


 ゴブリンが大量に湧き、連日のように怪我人が出る今の状況で神官の存在は本気でありがてぇ。



 そう思っていたら、ティアは自らゴブリンの討伐に向かうと言い出した。

 神官として優秀なのはわかったが、一人でゴブリン討伐は無謀だろう。

 本人曰く、攻撃魔法も使えるらしいが、あれだけの治癒魔法の使い手が攻撃魔法までまともに使えるとは思えねえ。


 ティアは自信満々に言って引かないので、俺もゴブリン討伐に付き合うことにした。

 傷を治してもらった恩もあるし、ティアほどの治癒魔法の使い手が側にいるなら、俺も思う存分戦える。





 そういうわけで俺達はゴブリン討伐に出掛けた。

 ティアには後方からの援護を任せて俺が前に出ながら戦うことにした。

 攻撃魔法が得意って言っても魔力に限界があるだろうし、なるべく温存させた方がいいだろう。


 ティアの治癒魔法のおかげで完全復活した俺はさっそく現れたゴブリンを蹴散らしていく。

 傷の痛みもまったくなく、絶好調だぜ。



 途中、アルフとメイラがゴブリンの群れに囲まれていたから助けておいた。

 コイツらは冒険者ギルドに入ったばかりの頃に何度か指導してやった顔見知りだ。

 アルフは多少、自信過剰なところがあるが腕は悪くねえ。なんだかんだ面倒見が良いメイラと気が合う、良いコンビだと思うぜ。


 アルフ達を襲っていたのはゴブリンオーガが統率している厄介な群れだったが、ティアの適切な援護もあって、割と簡単に討伐することが出来た。

 やっぱ治癒魔法の使い手が近くにいる安心感は、戦いの場での精神安定に重要だと改めて思ったぜ。




 ゴブリンの群れを討伐してアルフとメイラに話を聞くと、まだ他の冒険者パーティーが何組か奥の方に行っているらしい。

 そんな話を聞いていた時、奥の方から凄まじい魔物の叫び声が聞こえてきた。

 遠くの方からの声だというのに、さっきのオーガよりも迫力のある叫びだったぞ。


「今のは多分ゴブリンキングのものだね。結構な大物じゃないのさ」


 今のを聞いて、ティアが冷静にそんなことを言った。


「ゴ、ゴブリンキングだって!?」

「ウソでしょ!? そんなのが、こんな町のすぐ近くの山にいるなんて······」


 アルフとメイラが驚くのも無理はねえ。

 キングなんて、滅多に現れない超大物だ。

 俺も話に聞いたことがあるだけで、お目にかかったことはないくらいだ。


「ティア、なんでゴブリンキングの声だってわかるんだ? 他の魔物の可能性だってあるだろ?」


 とんでもない大物の叫び声だとはわかるが、ゴブリンキングだという確信は俺には出来ねえ。

 案外、さっきの個体よりも少し強いだけのゴブリンオーガの可能性だってあるしな。


「ゴブリンキングは何度か討伐したことあるからね。アイツの叫びには独特な波長ってのがあるのさ」


 だが、ティアの返答は意外なものだった。

 ゴブリンキングを何度か討伐したことある?

 滅多に現れない超大物を、何度も?

 いくらなんでも冗談が過ぎるだろう、それは。



「ちょ〜っとばかし先に行って様子を見てくるよ。皆はゆっくり休んでてね」

「あ、おいっ!? ティア······」


 俺の静止も聞かずにティアは奥に向かっていった。風魔法を身に纏い、まさに風の如く飛んでいったため、止める間もなかった。



 本当にゴブリンキングがいるとしたら、一人で行かせるわけにはいかねえ。

 すぐに追いかけねえと······!



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