43 殲滅
ようやくゴブリンの巣の最奥へとたどり着いた。
巣の中の魔物全てが集結しているようで、とんでもない数がいるね。
巣の最奥は何百体もの魔物が収容されても、余裕があるくらい広大なフロアとなっていた。
それと壁や床など、至る所に魔物の卵が確認出来る。そしてフロアの奥に他とは違う気配を纏った奴がいる。
通常のゴブリン同様の人型で大きな蟻のようなお腹を持つ、ゴブリンとビッグアントの特徴をそれぞれ持っている巨大な魔物だ。
通称ゴブリンアント、それも女王種に間違いないね。まあ、女王と言ってもゴブリン種のオスメスなんて私でもほとんど見分けはつかないんだけど。
――――――!! ――――――!!
周囲の卵が割れて、新たな魔物が生まれた。
雛のような可愛らしいものではなく、卵から出てすぐに成長しきった通常のゴブリンの姿だ。
生まれた直後に成長した姿で活動出来るのは、ビッグアントの特徴だ。
女王がいる限り、魔物は無限に生まれ続けるだろうね。こういう事態は私は初めてではない。
ゴブリンアントは数十年に一度くらいの割合で現れる変異種で、私がお目にかかったのはこれで三度目かな?
ゴブリンと蟻の繁殖力が合わさり、とんでもないスピードで数を増やしていくスタンピードの一種だ。
数を増やした魔物が餌を求めて、人間だけでなく、そこら中の食糧を喰い荒らしていく。
際限なく増えていくから、初動の対応が遅れると手が付けられなくなるんだよね。
もっとも、周囲の食糧を喰い尽くしたコイツらに待っているのは共喰い、そして餓死だ。
昔、ゴブリンアント率いる魔物が町や村を無差別に襲い、一つの国に壊滅的被害を出したことがあったんだけど、最終的には食べる物がなくなり、自滅していた。
悲しいことに周囲に甚大な被害を出すだけで、コイツら自身は未来のない集団なんだよね。
「ゲギャアアッ!!!」
女王の傍らにいるでっかいゴブリンが指示を出した。ここにも王がいたようだ。
ゴブリンキングの命令を受けて、周囲の魔物が一斉に襲いかかってきた。
「やる気かい? いいだろういいだろう。この天才魔術士······いや、大魔女ネイティアース様の手に掛かることを誇りに思うがいいさ」
仕方無い、最期は派手に引導を渡してあげようじゃないのさ。
通常ゴブリンにアーチャー、そして魔法攻撃を仕掛けてくるゴブリンメイジ。
さらには上位種のホブゴブリンにゴブリンオーガ、そして王。
ビッグアントもゴブリンと一緒に所狭しと並んでいる。
大魔法で巣ごと一掃すれば手っ取り早いんだけど、そうすると残して来た冒険者の女の子達まで巻き込んじゃうかもしれないから、地道に相手をしてあげるしかないかな。
ま、数の暴力で倒せるほど私は甘くないからね。
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「さて、残るはキミだけだね。女王」
激しい乱戦の末に女王以外の魔物は全滅させた。
フロアにあった卵も戦いの余波で全て割れてしまっている。
もう、女王を守る者は誰もいない。
「ギ、ギィィ······」
女王が威嚇の声をあげている。
女王は王を上回る戦闘能力を持つ強力な魔物なんだけど、大魔女として百戦錬磨の経験をしてきた私の敵じゃない。
一方的に蹂躙することになって、少しばかし哀しくもあるけど、これで終わりさね。




