38 天才魔術士様の活躍
複数の冒険者パーティーがゴブリンキング率いる群れに襲われていた。
群れの規模を考えると、ローグ君達が戦っていたのは別動隊で、こっちが本隊ってところかな?
冒険者は腕が立ちそうな人達ばかりだけど、群れの規模とゴブリンキングの迫力に負け、絶望している人もチラホラ見える。
「くそっ······ここまでか」
冒険者の一人が諦めのつぶやきを吐く。
かなりの傷を負っていて、すでに戦えそうにない。他の冒険者達も似たような感じだ。
けど、まだ犠牲者はいないみたいだね。
死んでさえいなければ私の治癒魔法で治すことが出来る。
よ〜し、それじゃあ天才魔術士ティア様の活躍を見せつけてあげますかね。
「「「ゲギャギャッ!!!」」」
通常種のゴブリン達が一斉に冒険者達に襲いかかった。まだ動けそうな冒険者達は懸命に構えるけど、立っているのがやっとみたいだ。
――――――――――!!!!!
突然の大爆発によってゴブリン達が吹き飛んだ。
もちろん、私の魔法だよ。
冒険者達を巻き込まず、ゴブリンだけを吹き飛ばす、繊細且つ高威力の爆裂魔法さね。
「困った時の救世主、天才魔術士ティア! 只今、参上! あっはっはっはっ!!」
私は名乗りを上げて舞い降りた。
何が起きたのかわからずに、冒険者達に新たな敵の出現と勘違いされても困るからね。
「ま、魔術士······?」
「助っ人か? だ、だが、たった一人じゃ······」
冒険者達は困惑した表情をうかべているけど、フォローしてる時間はないからね。
まずは周りのゴブリンをどうにかしないと。
「やあやあ、ゴブリン君達? おとなしく去るなら見逃してあげよう。それとも私とやり合うかい?」
まずは交渉からさね。
魔物とはいえ問答無用で虐殺する気はないよ。
通常種は人の言葉を理解出来る奴は少ないけど、ゴブリンキングくらいの大物になれば、話が通じることもあるからね。
「ゲギャギャギャギャッ!!!」
ゴブリンキングが指示を出し、手下の通常種をけしかけて来た。
やっぱり退く気はないか。
それに思っていたよりも知能は低そうだ。
しょうがない、それじゃあ遠慮なくいこうかね〜。
「グランサイクロン〜!!」
私は特大の風魔法を唱えた。
私を中心に巨大な竜巻が発生して、襲い来るゴブリン達を上空へと巻き上げていく。
無策で突っ込んで来たって私をどうこうすることは出来ないよ。
「「「ゲギャギャッ!!」」」
風魔法から運良く逃れたゴブリン達が一斉に向かってきた。
恐れをなして逃げてくれればいいものを、まだ私との力の差を理解出来ていないようだね。
火魔法や風魔法などなど、下級魔法を連発して向かってくるゴブリン達をすべて撃退した。
そんな突進じゃ私に近付くことも出来ないよ?
「「「「グオオーーッ!!」」」」
通常種が全滅したのを見て、今度はゴブリンオーガが巨大な棍棒を振り下ろしてきた。
ゴブリンオーガは全部で4体か。
私を強敵と判断して、一気に攻めて来たようだね。その判断は間違ってはいないけど、相手が悪かったね?
「「「「ゲギャッ!!?」」」」
ゴブリンオーガ達の棍棒は私に届くことなく、魔法障壁に阻まれた。
私が本気で張った魔法障壁は竜だって貫くことは出来ないんだからね。
「そ〜れ、プチプロージョン!!」
魔法障壁に攻撃を阻まれ、動揺していたゴブリンオーガ達に小規模爆裂魔法を放った。
至近距離から爆裂魔法を受けたことで、4体それぞれが派手に吹っ飛び、魔石だけを残して消滅した。
さ〜て、これで手下は全滅しちゃったし、残っているのはゴブリンキング君だけだね。
覚悟は出来ているかな〜?




