31 いざ、ゴブリン退治へ
「ゴブリンの巣とやらの場所を教えてくれるかな? ちょっと私も行ってみるから」
「え、ティアさん······討伐に行くつもりなんですか? 今、騒がせているゴブリンは通常種に比べて手強いんですよ」
ゴブリンの情報を聞こうとしたら、受付嬢ちゃんがそう言ってきた。
馬鹿にしているとかじゃなく、純粋に私を心配してくれているみたいだね。
普通、治癒魔法の使い手である神官は、魔術士と違って攻撃魔法はあまり使えない。
治癒魔法を披露したことで、私は戦いには向いてないと判断されたようだ。
「心配いらないよ、私は攻撃魔法も得意だからね。人呼んで天才魔術士ティア様なのさ!」
魔法は得意だよ、とアピールしたんだけど受付嬢ちゃんはあんまり良い顔をしてくれないね。
治癒魔法を使える神官は数が少なく、あまり前線には出て欲しくないらしい。
「なら俺が一緒に行くぜ。さっきはゴブリン共にいいようにやられちまったからな。今度は不覚を取らないぜ」
私が譲らず受付嬢ちゃんが困っていると、一人の冒険者が名乗り出てきた。
さっき私が治療した、おそらくはベテランと思われる冒険者だね。
私が見上げないと顔が見えないくらい身体が大きく、筋肉もムッキムキの大男さんだ。
「ローグさん、貴方もさっきまで怪我されてたじゃないですか」
「その嬢ちゃん、ティアのおかげですっかり治ったよ」
確かに結構な傷を負っていたけど、私の治癒魔法でとっくに全快している。
死んでさえいなければ私の魔法はあらゆる傷を治しちゃうよ。
「それじゃあ、そのムキムキさんに私の護衛をお願いしようかな。見たところ、かなりの実力者みたいだし頼りになるよね?」
私から見ても、ローグと呼ばれたムキムキさんは腕に覚えがありそうだよ。
怪我も治っているし、戦力になるだろう。
素行の悪い冒険者でもなさそうだしね。
「おう、治療費代わりだ。全力で守ってやるから頼りにしていいぜ!」
腕を上げて力こぶを作って見せてきた。
本当に力強さを感じるね〜。
けど、これだけ強そうなムキムキさんでもゴブリンに遅れを取っちゃったんだよね?
これは思ったよりもゴブリンの群れの規模が大きいかもしれないね。
「はあ······わかりました。ティアさん、危なくなったらローグさんを囮にして逃げて構いませんからね?」
「おいおい、そいつは酷いんじゃねえか?」
「ローグさんなら死にはしないでしょうから」
受付嬢ちゃんの言葉に苦笑いするムキムキさん。
なんだか受付嬢ちゃんとムキムキさんは結構、仲が良さそうだね。
ま、仲良きことは美しきかな、美しきかな。
さて、それじゃあ頼りになるムキムキさんを連れてゴブリン退治に出発だ〜!




