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3 冒険者達の事情

 冒険者達が戦っていた魔物は私の魔法でこんがり焼けてるから危機は去ったはずだけど、何か冒険者達の様子がおかしいね?


「ブ、ブレードボアを火魔法一撃で······」


 ああ、下級魔法一発で倒したことに驚いてるんだね。お仲間の女性冒険者の魔法はかき消されちゃってたもんね。


 今まで私の周りにいたのは上級魔術師だったり色々と高位の人達ばかりで、しかも私のことをよく知っているからあんまり驚いたりしなかったからね。

 いや〜、こういう反応も新鮮でいいね。


「あ、あの······助けてくれてありがとうございます!」


 赤髪の女性冒険者が私にお礼を言った。

 女性冒険者は二人いて、それぞれ赤髪と茶髪の子達だね。


「あっはっは、いいよいいよ。ちょっとお節介が過ぎたかもしれないけどね」


 私は豪快に笑って恐縮する女性冒険者に言った。

 全員、年は16〜18くらいかな?

 若い方だけどなかなかに良いパーティーに見えるね。


「俺はシャクト。このパーティーのリーダーをやっている。本当に助かった」


 リーダーはシャクト君ね。

 なかなかの好青年じゃないか。


「オレはレッグだ」

「わたしはサーリィです」

「あたしはタミアよ」


 もう一人の男の子はレッグ君、赤髪の女の子はサーリィちゃん、茶髪の子はタミアちゃんね。

 さて、相手が自己紹介してくれたんだから私も名乗らないとね。

 でもさすがに本名そのまま言うつもりはないよ。


「私は稀代の天才魔術士ティア! さあ存分に私を讃え、崇めるが良い! あっはっはっはっ!!」


 私の本名ネイ()()()ースから取った名を名乗った。

 昔、勇者と旅をしていた時に名乗っていた名だよ。懐かしいね〜。


 ところで君達、その残念な子を見るような目はなんなんだい?





「それで、この魔物はどうするんだい? 獲物を横取りする形になっちゃったけど君達にも取り分を得る権利はあるんだけど」


 ブレードボアの肉は食用として人気があるし、牙や骨、体毛なんかは武具の素材として有用だ。

 持ち帰れば結構な金額になるはずだね。


 まあ、私は正直いらないから全部あげてもいいんだけど、特に理由もなく譲っちゃったらそれはそれで問題があるからね。


「倒したのはティアさんだから魔物の素材はすべてティアさんの物で構わないよ」

「おや、ずいぶん謙虚だね」


 シャクト君がそう言ってきた。

 他の三人も異論はないといった様子だ。

 普通は少しでも分け前が欲しいってゴネるものだと思うんだけどな〜。


「俺達は魔物退治が目的でここに来たんじゃないんだ。上質な薬草を探していたんだよ」


 ほう? なるほどね〜。

 薬草を探していたところに魔物に襲われてたってわけだね。

 けど採取依頼を受けていたからって魔物の素材を遠慮する理由にはならないよね?

 そう思って聞いたらシャクト君が事情を話してくれた。



「今、町では未知の病気が流行り出していて薬草が大量に必要なんだ」


 なんでも突然、高熱に襲われて苦しみ出した人がたくさんいるらしい。

 周囲の人にも次々感染してしまっているらしく、かなり深刻な状況みたいだね。


 薬で熱を抑えられるそうだけど完治までは時間がかかり、患者が次々と増えているので薬の材料が全然足りないらしい。



 ああ〜、だからこんな森の中まで入ってきていたんだね。森の入口付近はすでに取り尽くしてしまい、危険な奥の方まで来ていたわけか。

 それでもあんまり集まってないようで、それで焦ってるんだね。


 うんうん、お金よりも病気の人達を助けようとするその姿勢、気に入ったよ。


「そういうことなら()()()()()(まっか)せなさい! 私なら治癒魔法も扱えるから病気なんてチョチョイと治してみせるよ!」


 私は胸をたたき、ドーンと自信満々に言った。

 私は攻撃魔法、支援魔法、生活魔法、もちろん治癒魔法などなどあらゆる魔法の超一流エキスパート、大魔女ネイティアース様だよ?

 病気で苦しんでた国を救ったことだって何回もあるからね。


「え、でもティアさんって魔術士ですよね? 神官でもないのに治癒魔法が使えるんですか?」


 サーリィちゃんがおそるおそるといった感じに疑問を投げかけてきた。

 まあ、()()()魔術士なら攻撃魔法の方を極めようとするものだからね。

 治癒魔法の方を覚えようとするとどうしても攻撃魔法の威力が低くなってしまう。

 両立させようとしてもどっちつかずに中途半端で役に立たない存在になっちゃうんだよね。


 だから攻撃魔法の使い手を魔術士、治癒魔法の使い手は神官(プリースト)と区別されている。

 なんで私はどっちも使えるかって?

 そりゃあ500年以上も生きてるんだからそれくらい出来ないとね。

 普通はどちらか片方を極めるのに数十年はかかるものなのだと言われているけど私はその10倍は時間があったんだから。


「こう見えても魔術士として()()()()()からね。どんな魔法でもお手のものさ」

「長いって······ティアさん、わたしと同じくらいの年齢に見えるんですけど」


 私の自信満々な言葉に対してサーリィちゃんがそう言った。


「あっはっはっ! ちなみに私の年は18だよ」


 見た目はね。

 私の容姿は500年前から変化ないからね。


「や、やっぱりわたしと同じじゃないですか······」

「······俺の一つ下になるんだな」


 ほう、シャクト君は19歳なのか〜。

 童顔だからもう少し下かと思ってたよ。



 まあそんなことはいいや。

 それよりも病気で苦しんでる人達を救いに町へ急ごう〜!




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