29 新たな土地へ
さあさあ、やって参りました新たな土地!
ルヴェリューン王国から少し離れて、辿り着いたはエヴォマース王国。
ここは温泉郷と呼ばれる、各地に天然温泉が湧き出る観光地として有名な国なんだよね。
ま、私が前にこの国に来たのは遥か昔のことだけど。だからこそ、どれくらい発展しているか楽しみだよ。
勇者の封印を見て回るという当初の予定も忘れていないよ?
この国にも心当たりがあるからね。
まあ、アレを封印と呼べるものかは別としてだけど。
まず私が寄ったのはリントスという、エヴォマース王国の首都から少し離れた所にある小さな町だ。
まあ、小さいといっても昔の話で、今は結構発展しているみたいだね。
町の規模はラーベリックと同じくらいかな。
さてさて~、どこから回ろうかな?
そう思っていたら、低い小さな唸りのような音が聞こえた。
私のお腹の音さね。
もちろん、周りには聞こえないくらい小さな音だったよ?
「まずは何か食べようかね」
不老不死の私でもお腹は空くんだよね。
まあ、餓死はしないから食べなくても大丈夫なんだけど、やっぱり空腹は嫌だからね。
飢えても死ぬことは出来ないって、かなりキツイんだよ?
ま、適当に回って食べ物でも摘もうかね。
とりあえずは何か売っていそうな商店通りの方へ向かうことにした。
適当な屋台で食べ物を買って、お腹を満たす。
さすが観光地だけあって食べ物も美味しいこと。
ただ、ちょっと気になったのは、人が思っていたよりも少なかったことかな。
閑散としているわけじゃないけど、もっと賑わっていると思ってたから意外だったよ。
「町のすぐ近くにゴブリンが巣を作っちまって、外から来る客が減ってるんだよ」
買い食いがてらに店主に聞いてみたら、そんな答えが返ってきた。
ゴブリンか〜。
単体なら駆け出し冒険者でも倒せるくらい弱い魔物だけど、群れになるとそこそこ厄介なんだよね。
仲間意識が強いのか、連携での戦闘を得意としているし、中には強い個体も現れたりするからね。
「冒険者や町の兵士達は退治に向かわないのかい?」
「何度か向かっているが、倒しても倒しても湧いてきて、数を減らせてないらしい」
どうやら巣は一つじゃないみたいだね。
けど、殲滅しきれないなんて相当だと思うよ。
それだけゴブリンが現れたとすると、ひょっとしたら特殊個体の女王でもいるのかな?
ま、いいや。
とりあえずはお腹も満たせたし、この町の冒険者ギルドで情報を集めようかね。




